
ワールドカップ日本代表
オランダと2-2。
チュニジアに4-0。
8度目の出場となったサッカー日本代表が世界を驚かせている。
強豪オランダ相手に2度のビハインドを跳ね返してのドロー。
チュニジア戦は、W杯1試合最多となる4得点で快勝。
やっとここまできたか。
キャプテン翼でサッカーが好きになり、Jリーグが始まり日本代表の試合はほぼ追いかけていました。
本線にすら出れない時期の続き。
ドーハの悲劇。
長年サッカーが好きな人はみんなが思っているでしょう。
やっとここまできた。
今までで一番楽しみなワールドカップになっています。
ガチ勢の人は毎晩、寝不足の人もいるのかもしれませんね。
しかし、世界が日本代表に注目しているのはスコアや技術的なことだけではありませんでした。。
試合が終わったあと誰もいなくなったロッカールームを掃除し感謝のメッセージを残して去っていく。
その日本代表の姿は過去の大会から海外メディアに何度も取り上げられ世界中で称賛されてきました。
そのロッカールームの光景を見たとき、私は神社の境内を思い出した。
サッカーと神社。一見、関係はありません。
しかし、この二つは「整える」という一本の線でつながっています。
そして、その線の先にあるのが森保監督のチームづくりであり、ある一人の指導者が確立した理論なのです。
森保監督の強さは「選手に考えさせる」こと
森保ジャパンのマネジメントは、よく「ボトムアップ方式」と呼ばれます。
監督が上から指示で縛りつけるのではなく、選手たちの主体性を引き出していくやり方です。
もちろん、伝えるべきことは伝える。
けれど、最後の判断はピッチに立つ選手にゆだねる。
監督に言われるのを待つのではなく、自分たちで考え立て直す。
あの土壇場での粘りや2度追いつく勝負強さは、この「自分で考える力」から生まれている。
では、森保監督のこの考え方はどこから来たのでしょう。
森保監督と一人の指導者との縁
森保監督が現役を引退し指導者としての道を歩みはじめた広島。
その同じ土地で、ユース年代の指導者同士として顔を合わせ交流を深めた人物がいます。
畑喜美夫先生。
「ボトムアップ理論」の提唱者であり、森保監督のチームマネジメントにも多大な影響を与えたと言われています。
実は私はご縁があって、この畑先生と面識があり
講演も直接拝聴する機会に恵まれ、その内容に感動しました。
だからこそ、今回のワールドカップを私は少し特別な思いで見ているのかもしれません。

畑喜美夫先生とはどんな人物な
1965年、広島生まれ。
選手としての経歴はまさにエリートそのもの。
東海大一高校から順天堂大学へ進み、U-17・U-20の日本代表に選出。
大学では関東選手権、総理大臣杯、全日本インカレの三冠に貢献しました。
しかし、大学卒業後に怪我で現役を断念。
その後、故郷の広島で教員となり指導者の道を歩みはじめました。
畑先生が行ったのは、サッカーがそれほど盛んではないごく普通の公立高校で、選手を主役にして勝つ方法でした。
それが「ボトムアップ理論」。
ボトムアップ理論とは
ボトムアップ理論を理解するには、その反対にある「トップダウン」と比べるのが分かりやすい。
トップダウンのキーワードは、指示、命令、そして思考停止。
監督が絶対的な指示を出し、選手はそれに従う。
日本のスポーツ指導では長くこれが当たり前でした。
一方、ボトムアップのキーワードは、任せる、認める、考えさせる。
畑先生のチームでは、試合のメンバー選考も、戦術も、選手交代のタイミングまで、通常なら監督がやることを選手たちに任せてしまいます。
練習さえも週に2回から3回に減らし空いた時間で選手が自分たちの頭で考える。
「教えない」のに強くなる。
これがボトムアップの不思議なところ。
その根底にあるのは畑先生のこんな信念です。
選手の99.9パーセントは、プロにはなれない。
だからこそ、社会に出たときに活躍できる人間を育てる。
目の前の勝利だけでなく、5年後、10年後に伸びていく人間をつくる。
それがボトムアップ理論の目的なのです。
最弱だったチームを日本一に
では、この理論は実際にどれほどの成果を生んだのでしょう。
畑先生は広島観音高校という公立高校を、2006年の全国高校総体(インターハイ)で初出場初優勝へと導きました。
強豪校をおさえての文字どおりの日本一。
さらに驚くのは、その次に赴任した安芸南高校での話。
当時の安芸南高校は、広島県の一番下、4部にいる最弱クラスのチームでした。
その弱小チームを畑先生はわずか5年で県のベスト8まで引き上げてしまったのです。
そして、その安芸南高校での出発点になったのがある意外な取り組みでした。
部室の掃除。
場を整えると心が整う
赴任した当初、安芸南高校サッカー部の部室はひどく散らかっていたといいます。
畑先生は、こんな言葉を選手たちに伝えました。
四畳半の部室をきれいにできなくてピッチの中を整えることはできない。
あいさつ、返事、後片付け。後片付けは、心を整える。
畑先生のチームでは、シューズやバッグの向きがミリ単位で整えられていました。
ただし、「整理整頓をしろ」と命令したわけではありません。
「部室がどんな状態だと、気持ちがいいかな」と問いかけ、選手たち自身に考えさせ行動させたのです。
すると、不思議なことが起きます。
靴を揃える意識が、ピッチの上でラインを揃える意識に変わっていくのです。
パスやポジショニングの雑さが消えミスが激減していきます。
神は細部に宿る。
畑先生が大切にしている言葉です。
場を整えることは心を整えること。
そして、心が整えばプレーが変わる。
試合後、ロッカールームを清めて去る日本代表。
あれもまた、場を整えることで心を整える、同じことなのです。
畑先生が毎朝、神社に参拝されている投稿をみます。
「場を整えると心が整う」と説く方が、毎朝、神社で自らの心を整えてから一日をはじめている。
理論を語る人が、その理論を自らの生き方で体現している。
だからこそ、畑先生の言葉にある重みを感じるのです。
私自身も毎日(ほぼ日)、神社に参拝するのを習慣にしています。
掃き清められた参道を歩き、手水で手と口をすすぎ、身を清めてから神前に立つ。
その一連の所作のなかで心が静かに整っていくのを感じます。
日本人は古来、清めるという営みを何よりも大切にしてきました。
禊(みそぎ)や祓(はらえ)という言葉があるように、
場を清め身を清めることは、そのまま心を清めることだと考えてきたのです。
畑先生が説く「後片付けは心を整える」という考え方は、この惟神(かんながら)の道とつながっています。
そう考えるとロッカールームを清めて去る日本代表は、この日本人古来の感覚を世界に見せているのかもしれません。
私たちの仕事の現場も同じこと
「場を整えると心が整う」という考え方は、私たちの仕事の現場や生活にも当てはまります。
散らかっていたり整理されていないとどこか落ち着かないものです。
そういった心のざわめきが日々の行動に影響が出てくるものです。
それはごく小さなことでしかないのかもしれません。
しかしその小さなことの積み重ねこそが自分を作っているのではないでしょうか。
そして、もう一つ大切なのがボトムアップの「任せる、考えさせる」という姿勢。
命令するのではなく、「どんな状態だと気持ちよくできるのか」を問いかけ考えてもらう。
言われたからやるのではなく、自分で気づいて動く。
人は自分で思ったことは自分から行動できるものです。
その小さな積み重ねが自立した自己と周りをつくっていきます。
一人ひとりが自分の頭で考え、動けるコミュニティはより強い関係を築けることでしょう。
それがまさに今の日本代表の姿なのです。
場を整えれば心が整う。
心が整えば未来は開ける扉が見えるようになることでしょう。

株式会社ガイネット代表取締役 趣味は神社仏閣巡り 初めてホームページを作ったのは20年以上前。そこから2社ほどで修行し33歳でフリーランスに、色々あって今さら法人設立。WEBとデザインの何でも屋であり書家でありYouTuberです。