
App Storeで1位を取ったアプリを社員は使っているかもしれません
2026年5月、日本のApp Store無料アプリランキングで、およそ1ヶ月にわたって1位を維持し続けたアプリがあります。
ChatGPTでもGeminiでもありません。
「setlog(セットログ)」という、韓国発のVlogアプリです。
中高生や大学生を中心に爆発的に広がったこのアプリを、経営者の方が知らないのは無理もないことだと思います。
ただ、御社の若手社員やアルバイトスタッフの多くが、すでにスマートフォンにインストールしている可能性は決して低くありません。
そして、このアプリの仕組みは、企業の情報管理という観点から見ると、いくつかの見過ごせない特徴を持っています。
setlogとは何か
setlogは、ソウルとニューヨークに拠点を置くnewchat社が2025年12月にリリースしたアプリです。
2026年4月下旬に日本語対応し、そこから一気に広がりました。
仕組みは驚くほどシンプルです。
1時間に1回、アプリから通知が届きます。
その通知を受けて、2秒ほどの短い動画を撮影する。
それだけです。
1日の終わりを迎えると、その日に撮影された動画がアプリによって自動的に時系列でつなぎ合わされ、1本のVlogとして完成します。
編集作業は一切必要ありません。
さらに、最大12人までのグループを作ることができ、メンバーそれぞれが撮影した動画が同じVlogの中に並びます。
同じ一日を、複数の視点から振り返ることができる。
この体験の新しさが、若い世代の心をつかみました。
なぜこれほど流行したのか
背景にあるのは、いわゆる「SNS疲れ」です。
Instagramに投稿するには、写真を選び、加工し、キャプションを考え、投稿する時間帯まで気にしなければなりません。
フォロワー数といいねの数が、常に自分に返ってきます。
同じ「ありのまま」を掲げたBeRealにも、通知から2分以内に撮影しなければ他人の投稿が見られなくなるという独特の緊張感がありました。
setlogには、そのどちらもありません。
撮り忘れても、その時間帯が黒い画面として記録されるだけです。
加工機能もなければ、いいねの数も表示されません。
見ているのは、招待した最大12人の友人だけです。
「映えなくていい、記録すればいい」
この価値観が、設計そのものに落とし込まれています。
企業にとってのリスクはどこにあるのか
ここからが本題です。
専門家がsetlogの急拡大に対して警鐘を鳴らしているのは、まさにこの「閉じた場である」という特徴そのものが原因だからです。
1時間に1回、撮影を促される
これは他のSNSにはない、setlog固有の性質です。
アプリの側から、定期的に撮影行動を促してくる。
1日8時間の勤務時間があるとすれば、その間に8回、通知が届く計算になります。
休憩室で、バックヤードで、あるいはデスクで。
その通知に応えて、社員がカメラを向ける可能性がある。
意図的な情報持ち出しではありません。
ただ「今日を記録しよう」としただけの行為が、結果として社内の様子を映像に残すことになります。
「身内だけだから」という油断
近年、アルバイトや正社員による情報流出が繰り返し話題になっています。
そしてその多くは、BeRealやInstagramのストーリーズが流出元になっています。
不特定多数に向けて発信したわけではありません。
親しい友人にだけ見せたつもりだった。
その油断が、炎上の火種になっています。
setlogも同じ構造を持っています。
いえ、むしろ「12人だけの閉じたグループ」という安心感がある分、油断の度合いはより深いかもしれません。
保存できる、そして加工できない
setlogで作成されたVlogは、スマートフォンに保存することができます。
そして、映像には加工もモザイクもかかっていません。
グループ内の誰か一人が、悪意なくその動画を別のSNSに投稿すれば、そこに映り込んだすべてが公開されます。
書類の文字、モニターの画面、来客の顔。
2秒の映像であっても、静止画として切り出せば読み取れる情報は少なくありません。
では、企業は何をすべきか
私が提案したいのは、「setlogを禁止する」というアプローチではありません。
なぜなら、アプリの名前を列挙して禁止した瞬間から、そのルールは古くなり始めるからです。
setlogの次に流行るアプリが出た時点で、規定に穴が開きます。
実際、Instagramも2026年5月に「Instants」という、閲覧後に消える写真共有機能をリリースしました。
この流れは、まだ続きます。
アプリ名ではなく、原則で書く
就業規則やSNSガイドラインに書くべきなのは、次のような原則です。
- 公開範囲の広狭を問わず、業務空間における撮影と共有を禁ずる
- 「親しい人だけが見る」という条件は、免責の理由にならない
- 撮影の意図がなくとも、映り込みによる情報流出は同様に扱う
アプリは移り変わりますが、この原則は変わりません。
なぜ危険なのかを、言葉で伝える
ルールを作るだけでは、おそらく足りません。
禁止されているから撮らない、という理解では、通知が鳴った瞬間の判断は変わらないからです。
「なぜ12人だけのグループでも危険なのか」
ここを本人が納得していなければ、ルールは形骸化します。
インターネットに一度上がったものは、二度と消えません。
この一文を、実例とともに伝えることです。
経営者自身が、知っておく
そして最後に、これが最も大切かもしれません。
若い世代が今どこにいて、何をしているのか。
それを知らないまま、ルールだけを整備することはできません。
App Storeのランキングを、月に一度でいいので眺めてみてください。
そこに並んでいるアプリの名前は、御社の若手社員が今いる場所です。
リスクの向こう側にあるもの
ここまで、リスクの話を続けてきました。
けれど私は、setlogの流行を「危ないもの」としてだけ捉えるのは、少しもったいないと思っています。
加工機能を持たないアプリが、生成AIを押しのけて1位を取った。
この事実は、企業の発信のあり方そのものに、静かな問いを投げかけています。
盛られたものが、信用されなくなっていく時代。
そこで企業は何を語るべきなのか。
setlogはかけがえのない青春の記録を残すための道具です。
それを頭ごなしに否定したいわけではありません。
ただ、企業という場においては、一人ひとりの何気ない2秒が、組織全体の信用に届いてしまうことがあります。
その事実を共有しておくことが、社員を守ることにもつながるのだと私は思います。
私たちガイネットは、旭川と札幌を拠点に、地域の中小企業さまのWeb制作とSNS運用をご支援しています。
社内のSNSガイドライン整備についても、実務の視点からご相談を承っております。
お気軽にお声がけください。

株式会社ガイネット代表取締役 趣味は神社仏閣巡り 初めてホームページを作ったのは20年以上前。そこから2社ほどで修行し33歳でフリーランスに、色々あって今さら法人設立。WEBとデザインの何でも屋であり書家でありYouTuberです。