
最近、街中で気になることがあります。
いかにもAIで作った掲示物がとても増えた。
雑貨店のPOP
カフェのA型看板に貼ってあるおすすめメニュー
整体院の入り口に貼ってるPOP
ラーメン屋の前に貼ってあるアルバイト募集のチラシ
ぱっと見はかわいくて、綺麗なデザイン。
でもなぜか情報が頭に入ってこないと思いません?
どれも同じような見た目だから購買意欲を刺激しないでしょう。
情報がぎっしり並んでいる。
でも見た後に何が描いてあったか覚えていない。
飲食店のPOPなのに食欲が湧いてこない。
そんな風に感じたことはありませんか?
実はそう感じているのはあなただけではないかもしれません。
AIデザインには見た目の良さの裏にいくつもの落とし穴があるのです。
今回はそんなお話。
「AIっぽさ」への違和感が話題に
そう感じているなら、その感覚は決して気のせいではないです。
ある意識調査では、SNSやWeb上で「不自然さ」や「作られた感じ」がする広告を見たことがある人が半数以上にのぼりました。
その理由として一番多かったのが「AIが作っていそうだと感じた」という回答。
見る人はもうAIっぽさを敏感に嗅ぎ分けているのです。
企業の広告でも実際に問題が起きています。
日本航空(JAL)では高価格帯クレジットカードのサイトに使った画像に生成AI特有の細部の違和感が指摘されました。
ポップコーンの容器にストローが刺さっている小物の形がおかしい。
SNSでの指摘が広がり、画像の差し替えと謝罪に至っています。
最高級を謳うサービスなのにどこか雑に見えてしまう。
その小さなズレがブランドへの信頼そのものを揺るがしたのです。
タブレットで知られるワコムでは公式SNSに投稿したイラストにAI生成の疑惑が浮上。
描く人を支えてきた企業がAIを使ったのかとクリエイターから反発の声が殺到。
こうした消費者の反応は「AIアレルギー」という言葉で呼ばれ始めています。
大企業ですらつまずくのです。
中小のお店や会社が無自覚に使えばどうなるか。
考えてみる価値はあります。
AIデザインが何で何が問題なのか6つの理由にまとめました。
理由1 どれも同じ見た目になる
AIは世の中の膨大なデザインを学習して平均値を出力します。
つまり誰が作ってもどこか見覚えのある仕上がりになるのです。
ふんわりした色合いのイラスト。
妙につるっとした質感の料理写真。
整いすぎていて逆に無機質なレイアウト。
みんな同じ顔の人物写真。
思い当たるものがあるのではないでしょうか。
綺麗なのに記憶に残らない。
どこかのお店のPOPとなんか似ている。
人間の脳は見たことのあるものを無意識に読み飛ばします。
毎日通る道の電柱をいちいち意識しないのです。
街に同じテイストの掲示物が溢れればあなたのチラシも風景の一部。
一生懸命作ったのに視界に入ってすらいない。
これほど悲しいことはありません。
理由2 情報が頭に入ってこない
デザインの役目は飾ることではなく伝えること。
何を一番伝えたいのか。
最初にどこを見てほしいのか。
そこからどの順番で視線を動かしてほしいのか。
プロのデザイナーはこの視線の流れを設計しています。
たとえばスーパーのチラシ。
値段が真っ先に目に飛び込み、次に商品、そして期日へと自然に視線が流れます。
見る人は考えなくても必要な情報を受け取れる。
これが設計されたデザインの力。
一方でAIが作るのはあくまでそれらしい配置。
文字も写真も綺麗に並んでいるのにどこから読めばいいのか分からない。
全部が主役のようで実は主役がいない。
見る人は一瞬で「読むのが面倒」と感じて目をそらします。
本人は気づいていませんがこれは店頭で毎日起きていること。
理由3 情報を沢山並べたがる
AIにはもう一つ厄介な癖があります。
誰が見るのか、どんな状況で見るのかを考えずに、ありがちな情報を沢山並列に並べたがるのです。
商品の特徴、こだわり、産地、栄養、お得情報、営業時間。
頼んでもいないのに、それらしい項目をずらりと揃えてくれます。
そしてここに作り手が陥りやすい罠があります。
自分では思いつかなかった情報まで出してくるので、「AIって凄い」と感心してしまうのです。
せっかく出してくれたのだからと全部載せたくなる。
気持ちは分かりますがこれが逆効果。
情報は沢山並ぶほど人の心には届かなくなります。
十個の特徴を並べたチラシより、たった一言の「今日焼きたてです」の方が足を止めさせる。
人は一度にひとつのことしか心に受け取れないからです。
店先を歩くお客様はあなたのPOPを読みに来ているわけではありません。
急いでいる人、スマホを見ながら歩く人、子どもの手を引く人。
そんな一瞬の視界に飛び込めるのは削りに削ったひとつのメッセージ。
何を載せるかより、何を載せないか。
実はデザインの腕はこの引き算にこそ表れるのです。
理由4 作った側が満足してしまう
これが実は一番根深い問題。
AIを使うと短時間で見栄えの良いものが出来上がります。
今まで手書きで一時間かかっていたPOPがものの数分で完成。
プロっぽい仕上がりに嬉しくなる。
よく出来たと満足して、店内のあちこちに沢山掲示してみよう。
その気持ちはとてもよく分かります。
でも大きな落とし穴があります。
「作れた」という満足と「伝わった」という成果はまったくの別物なのです。
実際にこんな話があります。
手書きPOPをAIデザインに切り替えたお店でなぜか商品の動きが鈍くなった。
不思議に思って元の手書きに戻したらまた売れ始めた。
下手でも味のある手書き文字には店主の熱量が宿っていたのです。
怖いのはこうした変化に気づかないまま使い続けることです。
作った本人は満足しているから疑いもしない。
売上が落ちてもまさかPOPが原因だとは思わない。
デザインの良し悪しを決めるのは作った本人ではなく見たお客様の反応です。
掲示した後にこそ本当の答え合わせがみえてきます。
理由5 流行やブランディングと噛み合っていない
デザインにはその時の流行や時代の空気があります。
数年前に流行った雰囲気のデザインは見る人に古さを感じさせます。
周りにどんな情報が溢れているかも大きく影響します。
商店街の掲示板に貼られるのかSNSで流れてくるのか。
同じデザインでも置かれる場所で見え方は変わるのです。
そして何より大切なのがお店のブランドに沿っているかどうか。
たとえば創業五十年の老舗和菓子屋さんに海外風のポップなイラストのチラシ。
たとえば落ち着いた大人の隠れ家バーに原色ではしゃいだ告知ポスター。
見る人は理屈より先に小さな違和感を覚えます。
「あれ、このお店ってこんな感じだったっけ」という言葉にならない引っかかり。
この違和感の積み重ねが少しずつお店の信頼を削っていきます。
先ほどのワコムの炎上も、突き詰めればブランドと表現のズレが原因でした。
AIはあなたのお店の歴史も常連さんの顔も、大切にしてきた空気感も知りません。
知らないものをデザインに込められるはずがないのです。
理由6 使う人によって仕上がりが大きく変わる
ではAIは使わない方がいいのか?
AIそのものが悪いわけではありません。
実はプロのデザイナーもAIを使っていないわけではないのです。
違いはどう使うか。
デザイナーはAIの出力をそのまま使いません。
レイアウトの参考にする。
AIの並べた情報から取捨選択する。
一部の画像を修正する。
写真の面倒な修正を任せる。
世の中の情報を調べてもらう。
お店のブランドに合わせて素材を選びデザインする。
AIが出した素材をそのお店だけのデザインに仕上げていくのです。
デザインの基本や、見る人の心に響かせる方法が分かっている人にとってAIは強力な道具になります。
逆に基礎がないまま出力をそのまま使えば逆効果にさえなり得ます。
料理人の包丁と同じ。
料理人が握れば絶品の一皿が生まれ素人が振り回せば危ない思いをする。
AIは道具として使えば優秀です。
でも優秀な結果を出してもらうためにはそれなりのやり取りとトンチが必要です。
命令によってAIが返してくる結果は大きく変わります。
AIは使う人によって出力されるものが大きく異なるのです。
そのデザインは誰かの心を動かしていますか
私たちもAIを道具として使いながら伝わるデザインを日々考えています。
大切なのはAIを使うことではなく見た人の心が動くかどうか。
綺麗に作れたこととお客様に伝わったことは違います。
見た目が整っただけで伝わった気になってしまう。
反応を確かめないまま、掲示し続けてしまう。
お店らしさよりも、それっぽさを優先してしまう。
こんなことやってしまっていませんか?
大切なのは見た人がどう思うかなのです。
普段からよその掲示物を自分が消費者としてどう感じるか気にしてみてください。

株式会社ガイネット代表取締役 趣味は神社仏閣巡り 初めてホームページを作ったのは20年以上前。そこから2社ほどで修行し33歳でフリーランスに、色々あって今さら法人設立。WEBとデザインの何でも屋であり書家でありYouTuberです。