野球場ではなく、街を作った。エスコンフィールドの経営戦略

ChatGPT Image 2026年6月19日 17 38

エスコンフィールドって、野球に詳しくない人でも「一度行ってみたい」と思わせる場所ですよね。

これはかなりすごいことだと思います。

普通、球場というと「野球を見る人が行く場所」です。
野球に興味がなければ、なかなか行く理由がありません。

でもエスコンフィールドは、少し違います。

野球を見る。
ご飯を食べる。
クラフトビールを飲む。
温泉やサウナに入る。
子どもと遊ぶ。
イベントに行く。
写真を撮る。
観光として立ち寄る。

もはや、球場というより「行く目的地」になっています。

この発想が、エスコンフィールドの一番面白いところだと思います。

エスコンフィールドは「球場」ではなく「街づくり」の中心

エスコンフィールドHOKKAIDOは、2023年に開業した北海道日本ハムファイターズの新球場です。

ただし、エスコンフィールド単体で見るよりも、北海道ボールパークFビレッジという大きな街づくりの中核として見た方が、このプロジェクトの本質がわかりやすくなります。

Fビレッジは、北広島市に作られた約32ヘクタールのエリアです。

球場を中心に、飲食、ショップ、イベント、自然体験、宿泊、温泉、サウナなどが組み合わさっています。

つまり、エスコンは「試合をするための施設」ではなく、人を集め、滞在させ、消費を生み、街の価値まで高めるための場所として作られているわけです。

ここが経営的に非常に重要です。

札幌ドーム時代から、何が変わったのか

エスコンフィールドができる前、日本ハムファイターズは札幌ドームを本拠地にしていました。

もちろん札幌ドームは大きな施設ですし、集客力もありました。

ただ、球団側から見ると、自分たちで自由に設計できない収益が多かったはずです。

チケット。
広告。
飲食。
グッズ。
イベント。
施設運営。

これらをどこまで自社の収益として設計できるかで、ビジネスの構造は大きく変わります。

エスコン開業後、ファイターズの球団・ボールパーク関連事業は大きく伸びています。

日本ハムのIR資料では、札幌ドーム時代に近い2019年の売上高が158億円だったのに対し、エスコンフィールド開業初年度の2023年には251億円まで増えたと説明されています。

比較時期 売上高
2019年・札幌ドーム時代 158億円
2023年・エスコン開業初年度 251億円

さらに、2023年は広告収入が1.8倍、チケット収入が1.5倍、飲食収入は札幌ドーム時代の「従来ゼロ」から大きく改善したとされています。

ここで見るべきなのは、単に「新球場ができたから人が来た」という話ではありません。

収益が発生する接点そのものを増やしたということです。

野球興行から、空間ビジネスへ

エスコンの強さは、野球の試合を開催するだけではありません。

球場に来る。
席を買う。
飲食をする。
グッズを買う。
広告を見る。
温泉に入る。
イベントに参加する。
宿泊する。
SNSに投稿する。
また来たいと思う。

このすべてが、事業の一部になっています。

つまりエスコンは、野球興行から空間ビジネスへ変わった事例だと思います。

これまでの球場ビジネスが「試合の日に人を集める」ことを中心にしていたとすれば、エスコンは「試合がある日もない日も、人が集まる場所を作る」ことに挑戦しています。

この違いは、とても大きいです。

試合がない日にも人を呼べている

エスコンフィールドの面白さは、試合がない日にも人を呼べていることです。

2025年のFビレッジ年間来場者数は459万1,357人。内訳は、ファイターズ主催のレギュラーシーズン公式戦71試合が223万2,364人、その他イベントが235万8,993人です。

2025年 Fビレッジ来場者 人数
年間来場者数 459万1,357人
ファイターズ主催レギュラーシーズン公式戦 223万2,364人
その他イベント 235万8,993人

つまり、公式戦以外の来場者が、公式戦の来場者を上回っています。

これはかなり重要です。

普通の球場は、試合がある日が主役です。
でもエスコンは、試合がない日にも人が来る。

この状態を作れていることが、本当に強いと思います。

お店でも会社でも同じですが、「メイン商品を買う人」だけを相手にしていると、来店理由や利用頻度には限界があります。

でも、メイン商品以外にも来る理由があると、接点が増えます。

エスコンでいえば、野球を見ない人にも来る理由を作った。

これはマーケティングとして非常に学べる部分です。

ターゲットを「野球を見る人」から広げた

エスコンのマーケティングを一言で言うなら、利用シーンの拡張だと思います。

野球ファンだけを相手にするのではなく、家族連れ、観光客、サウナ好き、グルメ目的の人、イベント目的の人、企業利用、海外からの来場者まで取り込んでいる。

つまり、ターゲットを
「野球を見る人」から「一日を楽しみたい人」へ広げた
わけです。

エスコンに行く理由は、野球だけではありません。

家族で遊びに行く場所。
北海道旅行で立ち寄る場所。
食事を楽しむ場所。
温泉やサウナを楽しむ場所。
イベントに参加する場所。
写真を撮りたくなる場所。

このように、一つの施設に複数の来場理由を作っています。

だから強いのです。

滞在時間が伸びると、売上機会も増える

もう一つ面白い数字があります。

2025年のデータでは、公式戦の平均試合時間が3時間12分なのに対して、Fビレッジでの平均滞在時間は4時間52分とされています。

項目 時間
公式戦の平均試合時間 3時間12分
Fビレッジでの平均滞在時間 4時間52分

つまり、来場者は試合時間以上に、球場や周辺施設で過ごしているということです。

これは経営的にかなり重要です。

滞在時間が伸びるということは、接触時間が伸びるということです。

接触時間が伸びれば、飲食、物販、広告、体験、SNS投稿、再来場の可能性も高まります。

お客様との接点が短いと、売れるものも限られます。
でも、滞在したくなる場所になれば、売上の機会は増えます。

エスコンは、まさにその設計がうまいのだと思います。

地域経済のエンジンになっている

エスコンフィールドは、球団経営だけではなく、地域経済にも大きな影響を与えています。

日本ハムのIR資料では、Fビレッジによる北広島市への経済直接効果は年間500億円超、北海道全体への経済効果は波及効果込みで年間1,000億円超とされています。

また、2025年には道外からの来場者が112万人となり、全体の24%を占めています。海外からの来場者も伸びており、台湾からの来場者数は前年比248%と大幅に増加しています。

地域貢献に関する指標 内容
北広島市への経済直接効果 年間500億円超
北海道への経済効果 年間1,000億円超
2025年 道外からの来場者 112万人
道外来場者の割合 全体の24%

つまりエスコンは、ただ野球ファンを集めているだけではありません。

北広島に人を呼び、北海道に人を呼び、飲食、宿泊、交通、観光、雇用、街の開発にまで影響を与えています。

球場が地域経済のエンジンになっているわけです。

エスコンの本質は「主目的以外の来場理由」

ここまで見ると、エスコンフィールドの本質は「新しくてきれいな球場」ではないと思います。

本質は、主目的以外の来場理由をどれだけ作れるかです。

野球を見るためだけの場所なら、野球に興味のある人しか来ません。

でも、食べる、遊ぶ、泊まる、整う、体験する、投稿する、観光する、という理由が増えれば、来る人も増えます。

そして、来る人が増えれば、街も変わります。

これは、どんな業種にも応用できる考え方です。

中小企業のマーケティングにも通じる話

この考え方は、中小企業のマーケティングにもかなり通じます。

飲食店なら、料理を出すだけではなく、写真を撮りたくなる空間、季節イベント、テイクアウト、ギフト、地域コラボを作る。

工務店なら、家を建てるだけではなく、見学会、暮らしの相談、OB客との関係、メンテナンス講座を作る。

美容室なら、髪を切るだけではなく、ヘアケア相談、写真を撮りたくなる仕上げ、季節の提案、紹介したくなる接客体験を作る。

制作会社なら、ホームページを作るだけではなく、広報設計、SNS導線、動画、公式LINE、印刷物までつなげる。

商品やサービスそのものだけでなく、その周辺にどんな体験を作れるか。

そこが、これからのマーケティングではかなり重要になると思います。

「何を売るか」から「どんな目的地になるか」へ

エスコンフィールドは、野球場を作ったのではなく、野球を入口にした目的地を作りました。

そして、目的地になったからこそ、人が集まり、滞在し、消費し、発信し、地域まで動かしています。

経営において大切なのは、ただ良い商品を作ることだけではありません。

その商品をきっかけに、どんな時間を作れるか。
どんな体験を作れるか。
どんな理由でまた来てもらえるか。
どんな人まで巻き込めるか。

エスコンフィールドを見ていると、これからの商売は「何を売るか」だけではなく、
どんな場所・どんな体験・どんな目的地になれるか
が大事なのだと感じます。

まとめ

エスコンフィールドは、野球を見るためだけの場所ではありません。

北海道ボールパークFビレッジという街づくりの中心として、野球、飲食、温泉、サウナ、宿泊、イベント、観光、地域経済をつなげています。

札幌ドーム時代と比べて、売上構造も大きく変わりました。

試合がない日にも人を呼び、滞在時間を伸ばし、道外や海外からも人を集め、北広島市や北海道全体に経済効果を生み出しています。

その本質は、主目的以外の来場理由を作ったことです。

商品だけでなく、体験を設計する。
売上だけでなく、接点を増やす。
施設だけでなく、目的地を作る。
集客だけでなく、地域を動かす。

エスコンフィールドは、これからのマーケティングやブランディングを考えるうえで、非常に学びの多い事例だと思います。

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