多発的マイクロ炎上マーケティング|カルビーが仕掛けた新時代SNS戦略

今日もスマホに戦争のニュースが流れてきます。

ウクライナ、中東、またどこか。次々と出てくる。

でも正直なところ、日本にいるとどこまで本当のことなのか、よく分からないです。

メディアへの信頼がここ数年でずいぶん落ちました。テレビも新聞も、「そのまま信じていいのか」と思いながら見ている人が増えている。ネットには陰謀論も飛び交っています。何が本当で、何がそうでないのか。正直、判断が難しい時代になりました。

そんな中で、身近なところからリアルな話が入ってきます。

知り合いの塗装屋さんや内装屋さんから聞いた話です。メーカーから連絡があって、夏以降は材料の確保が難しくなるかもしれないと言われているそうです。

建材や塗料の原料も、石油化学の川下にあります。世界で何かが起きると、こういうところに静かに影響が出てくる。戦争のニュースが遠い話に見えても、現場の職人さんたちにはもう届いているわけです。

一体何が起きているのか。

そう思っていたところに、カルビーからあるニュースが発表されました。

ポテトチップスのパッケージが、白黒印刷になるかもしれない。

ちょっと待ってください。

カルビーのポテトチップス、パッケージが白黒印刷になるかもしれないって話、聞きましたか?

ナフサ不足の影響でインキが使えなくなる。だからグラビア印刷が制限される。そういう話が業界で出ているらしいです。

で、なんでポテトチップスだけなの、という声がSNSで上がっています。

そこが面白い。

まずナフサの話を30秒で。

ナフサというのは石油から精製される原料で、プラスチックや合成繊維、そして印刷インキの溶剤にも使われています。

石油化学の川上にある素材だから、ここが詰まると川下のいろんなところに影響が出る。

印刷インキもその一つです。

特にグラビア印刷という方式は、フィルムへの印刷に使われていて、お菓子のパッケージに多用されています。コンビニやスーパーで並んでいる袋菓子の、あのツヤツヤしたパッケージがそれです。

カルビーのポテトチップスも当然そう。

だから「ナフサ不足でポテトチップスが白黒に」という話は、ロジックとしてはまあ筋が通っています。

でも待って。なんでポテトチップスだけ?

これがSNSで最初に引っかかった人の感覚として、正直まっとうだと思います。

グラビア印刷を使っているパッケージなんて、世の中に山ほどある。洗剤も、シャンプーも、冷凍食品も、ペットフードも。

なのにカルビーのポテトチップスだけが話題になる。

なぜか。

カルビーが自分から言ったからです。

そこがポイントだと私は思っています。

「言った」というのが全ての始まり。

ナフサ不足はカルビーだけの問題じゃない。業界全体の話です。

でもカルビーは「パッケージが白黒になる可能性がある」という情報を、なぜかちゃんと表に出した。

これ、普通の会社はやらないです。

こういう話はだいたい社内で処理されて、気づいたら静かにパッケージが変わっていて、気づかない人は気づかないままで終わる。

でもカルビーは言った。

言ったことで何が起きたか。

SNSが動きました。

SNSの動き方が教科書みたいだった。

最初に「え、白黒になるの?」という驚きの声が上がります。

次に「なんでポテトチップスだけ?」という疑問が出る。

そしてAIでパッケージ画像を勝手に作り始める人が出てくる。

「白黒カルビー、こうしたら売れるんじゃない?」みたいなデザイン案を上げる人も出てきます。

「著作権侵害じゃないの?」という指摘も出る。

「いや、カルビーが公式でこれやったら絶対バズる」という声も出てくる。

「マーケが分かってない人ばかり」と知ったかぶりのアカウントも出てきます。

全部ちゃんと出た。

これ、一つの「炎上」じゃないです。あちこちで小さな火がパチパチと上がっている状態。

私はこれを「多発的マイクロ炎上マーケティング」と呼ぼうと思います。

多発的マイクロ炎上の何が強いか。

普通の炎上は一点集中型です。

誰かが何か悪いことをして、そこに批判が集中して、企業が謝罪して、しばらく経って忘れられる。

これはブランドにとってマイナスしかない。

でも多発的マイクロ炎上は違います。

小さな火がいろんな場所で、いろんな文脈で上がる。

デザイン好きの人はデザインで盛り上がる。
マーケ好きの人はマーケ論で議論する。
食品業界の人はナフサの話をする。
ただのお菓子好きは「白黒になっても買う」と言う。

それぞれのクラスターで、それぞれの話題として燃える。

そして誰もカルビーを本気で責めていない。

これが最大のポイントです。

カルビーは炎上していない。

批判されているのはカルビーじゃなくて、「勝手にデザイン案を作る人」だったり、「著作権を無視している人」だったり、「マーケ論をドヤ顔で語る人」だったりします。

カルビー自身はむしろ被害者ポジションで、同情すら集めている。

「ナフサ不足で大変なのにがんばってる」という見られ方をしています。

ブランドイメージはむしろ上がっている可能性がある。

これが「仕掛けだったとしたら」の怖いところです。

私の陰謀論を聞いてください。

カルビーのマーケティング部門に、こういう会話があったとしたら。

「ナフサ不足、どうせ業界の話題になるんだったら、先に言っちゃいましょうよ。白黒になる可能性があるって言うだけで、SNSが勝手に動きますよ。パッケージは結局そのままでも、話題にはなりましたで終われますから」

証拠はないです。完全に私の妄想です。

でも、この「言い方」が非常に上手すぎる。

「白黒になるかもしれない」という表現は、断定じゃない。可能性の話です。

だから「やっぱり大丈夫でした」で終われる。

本当に白黒パッケージが出たら出たで、みんな一度は買う。

出なくても「ああよかった」で話題が完結します。

どちらに転んでも、カルビーの負けがない。

これ、怖くないですか。

中小企業がここから学べることは何か。

私はWeb制作と集客支援の仕事をしているから、クライアントにこの話をどう使えるか、という目線で常に見ています。

まず、「ネガティブな情報も先に言う」という姿勢は使えます。

「価格が上がります」「納期が延びます」「仕様が変わります」こういう話を後から出すと、信頼を失う。でも先に言うと、誠実さになります。

次に、「話題の作り方は断定しなくていい」というのも使えます。

「こういうことを考えています」「こうなるかもしれません」という発信は、確定情報より議論を呼びやすい。議論は拡散になります。

そして何より、「自分のブランドに関係した話題が出たとき、どう乗るか」を常に考えておくこと。

カルビーはナフサ不足というニュースに、自分のブランドをうまく乗せた。いや、乗せた「かもしれない」。

こういう「乗り方」の引き出しを持っておくことが、小さな会社の広報力になります。

白黒のポテトチップス、出たら買います。

絶対買います。

限定感があってむしろ欲しい。

カルビーが本当に仕掛けたのかどうかは分からないです。でも「仕掛けたかもしれない」と思わせる時点で、もうマーケティングとして成立しています。

意図があろうとなかろうと、結果が出ているなら、それが正解です。

ただ、私たちは何が正解だとしても、世の中の大きなうねりに抗うことはできないです。

戦争が起きても、原料が高騰しても、パッケージが白黒になっても、時代はそういうふうに動いていく。個人にできることは限られています。

でも考えてみれば、少なくとも日本にいる限り、ある程度の生活は担保されています。電気はつくし、水は出るし、コンビニには食べ物が並んでいる。それが当たり前に見えて、実はそうじゃない国が世界にはたくさんある。

この状況を作ってくれた先人たちには、感謝しかないです。

だから私は今日も仕事をします。カルビーのマーケティングに感心しながら、クライアントの集客をどう伸ばすか考えながら、必死にやるだけです。

なるようになる。

それが分かっているだけで、少し気が楽になります。

さあ、今日も頑張りましょう。

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