
先日、就活イベントのブース装飾についてあれこれ調べる機会がありました。
合同説明会の会場で企業がそれぞれのブースに掲げている、あの椅子カバーやテーブルクロス、タペストリーの話です。
そもそも、就活ブースにはどんなデザイン物があるのか
まず、合同説明会のブースで使われる装飾物にはだいたい決まった種類があります。
それぞれに役割があって、置く場所も意味が違います。
一番定番なのが、椅子カバーです。
学生が座るパイプ椅子に被せるもので、一枚あたりの面積は小さいのですがコーポレートカラーで作ったものを何脚も並べると、それだけでブース全体の雰囲気ががらりと変わります。
次にテーブルクロスです。
面積が大きくブースを占める割合も高いので、訴求力という点では装飾物の中でも群を抜いています。
キャッチコピーや、自社の仕事が一目で伝わる写真を入れると、通路を歩く学生の目に留まりやすくなります。
そして、タペストリーやポスターです。
高い位置に設置できるので、最も学生の目に入りやすいツールです。
掲示面積も大きく、ブース内の雰囲気を決める看板のような役割を持っています。
このほかにも、ロールアップバナーやのぼり旗、バックパネル、配布用のトートバッグなど、いろいろな装飾物があります。
パーテーションで区切られない会場ではのぼり旗が効きますし、自社ロゴ入りのトートバッグを下げた学生が会場を歩くと、それ自体が認知の広告になります。
「目立てばいい」というものではありません
ここからが本題です。
装飾物の話をすると、どうしても「とにかく派手にして目立たせよう」という方向に行きがちです。
ですが、調べていて一番なるほどと思ったのは目立つことそのものはゴールではない、という点でした。
マイナビが主催する大規模な合同説明会では、数百社が出展することもあるそうです。
そして、学生が一日で回れるブースは、せいぜい七、八社が限界だといいます。
つまり学生は、限られた時間の中でどのブースに座るかを、絶えず取捨選択しているわけです。
しかも、そのブースに座るかどうかの判断はほんの数秒で行われると言われています。
会場を歩きながら、目に入った情報だけで「ここは何の会社で、自分に関係がありそうか」を一瞬で見極めているのです。
この数秒の勝負を、装飾物が担っています。
だからこそ装飾物に求められるのは、派手さではなく「何をしている会社なのかが一目で伝わること」です。
一切装飾をしないと、社名看板の下に机と椅子が並んでいるだけの無機質な空間になり、何の会社かすら伝わらずにスルーされてしまいます。
逆に、派手なだけで情報を詰め込みすぎたブースも、結局のところ何も伝わりません。
遠くから歩いてくる学生に対しては「読み込ませる」のではなく「気づかせる」ことが大事で伝える内容は社名と、一番伝えたいワンメッセージくらいに絞ったほうが、むしろ届くのです。
就活生は、実はどこを見ているのか
では、学生はブースの何を見て会社を判断しているのでしょうか。
これも興味深いデータがありました。
マイナビの調査で「どの企業の話を聞くかの判断基準」を学生に尋ねたところ、一位になったのは「ブース内の社員の雰囲気」だったそうです。
つまり、装飾物そのものよりも、その装飾されたブースの中にいる「人」を見ているということです。
自然な雰囲気で迎えていたり、リラックスした表情で話していたりすると学生は「この会社、なんだか良さそう」と感じて足を止めやすくなります。
反対に呼び込みが強引すぎたり、社員同士のやり取りにぎこちなさや強い上下関係を感じたりすると、避けられてしまいます。
ここが、装飾物を考えるうえでとても大切なポイントだと思います。
装飾物はそれ単体で完結するものではありません。
その装飾が作り出す世界観と、ブースに立つ社員の振る舞いが噛み合ってはじめて「良い雰囲気の会社」という印象が成立します。
装飾はクリーンで洗練されているのに、中にいる社員がスマホばかり見ている。
これでは、装飾にかけたお金がそのまま逆効果になってしまいます。
装飾物のデザインを考えるときは、当日その前に立つ人の姿まで含めて設計する必要がある、ということです。
中小企業こそ、コンセプトで差をつけるべきです
ここまで読んでいただくと、なんとなく察していただけるかもしれません。
これは、私たちが普段やっているWebサイトのデザインと、まったく同じ構造の話なのです。
知名度のある大手企業であれば、社名とロゴを大きく出すだけで学生は集まります。
「あの会社だ」というだけで、それ自体が大きな魅力になるからです。
ですが、中小企業はそうはいきません。
派手なデザインに社名ロゴを載せたツールで挑んだとしても、規模でも知名度でも大手には敵わず、社名だけの勝負では学生の心は動きません。
着席してもらい、その先の選考まで進んでもらうためには、社名ではなく「自社ならではの魅力や強み」を印象づける必要があります。
ここで効いてくるのが、コンセプトワークです。
たとえば、ある環境系の企業の事例が紹介されていました。
その会社は「土」に関わる仕事をしていて、学生からの認知度が低く、地味な印象を持たれがちだったそうです。
水や空気を扱う同業他社が、白を基調としたクリーンなイメージを打ち出す中で、その会社はあえて地層や土を想像させる濃いめのデザインを選びました。
そして、土に関わる仕事の重要さが伝わるキャッチコピーを掲げたのです。
結果として、もともと他社目当てで来ていた学生が、その装飾をきっかけに足を止めて着席し、選考に進んでくれたといいます。
これは「目立たせた」から成功したのではありません。
「誰に、何を、どう伝えるか」を突き詰めた結果として、必然的に他社と違う見た目になった、という順番です。
デザインは目的ではなく、コンセプトを翻訳した結果として現れるもの、ということがよく分かる事例だと思います。
装飾物をつくる前に、決めておきたいこと
では、実際に装飾物をつくるとなったとき、何から手をつければいいのでしょうか。
順番として大切なのは、いきなりデザインや色を決めにいかないことです。
まず「どんな人に来てほしいのか」というターゲットを定め、その人に「自社の何を一番伝えたいのか」というメッセージを固める。
装飾物のデザインは、その後に決まってくるものです。
たとえば、活発で行動力のある人材に来てほしいのであれば、暖色系のエネルギッシュな配色にして、文字を太く大きく配置する。
落ち着いた信頼感を伝えたいのであれば、余白をたっぷり取って、文字組みで誠実さを出す。
このように、求める人材像からデザインを逆算していくと、自然と「自社らしい」装飾物になります。
コンセプトが定まっていないまま、椅子カバーはこの色、タペストリーはこの写真、と個別に決めていくと、全体がちぐはぐになります。
逆に、軸となるコンセプトが一本通っていれば、椅子カバーもテーブルクロスもタペストリーも、すべてが同じ世界観でつながり、ブース全体に一体感が生まれます。
この「作り込まれている感」が、隣のブースと比較されても見劣りしない強さになります。
なお、実務的な注意点として、大規模な会場では消防法で防炎加工が義務づけられているケースがほとんどです。
布製の装飾物を発注する際は、防炎加工に対応しているかを必ず確認しておくと安心です。
結局のところ、Webサイトと同じ話です
ここまで就活ブースの装飾物について書いてきましたが、最初に申し上げたとおりこれはホームページのデザインとまったく同じ構造を持っています。
数秒で判断される目立つだけでは選ばれない、見た目より「誰に何を伝えるか」で決まる、そしてコンセプトが一本通っているかどうかで印象がまるで変わる。
これらはすべて、私たちがWebサイトをつくるときに、いつもお客様と一緒に考えていることそのものです。
採用にせよ集客にせよ、根っこにあるのは「自社の魅力をどう言語化し、どう視覚に翻訳するか」という一点です。
ここがぶれていなければ媒体が紙であってもWebであっても、ブースであっても伝わるものは伝わります。
ガイネットでは、Webサイトの制作はもちろん、その手前にある「自社の魅力を整理してコンセプトに落とし込む」という部分から、北海道の中小企業のみなさまのお手伝いをしています。
採用や集客で「なんとなく伝わっていない気がする」という感覚があれば、まずはそのあたりの整理からお気軽にご相談ください。

株式会社ガイネット代表取締役 趣味は神社仏閣巡り 初めてホームページを作ったのは20年以上前。そこから2社ほどで修行し33歳でフリーランスに、色々あって今さら法人設立。WEBとデザインの何でも屋であり書家でありYouTuberです。