デザインが上手いだけではフリーランスは続かない

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フリーランスのデザイナーとして独立するとき多くの人が最初に考えるのは技術的なことです。

もっとデザインが上手くなりたい。
良い作品をつくりたい。
ポートフォリオを充実させたい。

もちろんどれも大事です。

ただ実際に仕事を続けていく中で、大きな壁になるのはデザイン力ではないことがあります。

営業です。

もう少しやわらかく言うと人と話すこと。
自分の考えを伝えること。
相手の話を聞いて何を求めているのか整理することです。

デザインの仕事なのに結局そこなのかと思うかもしれません。

僕もいろいろなデザイナーを見てきましたが、仕事が続く人は必ずしも一番デザインが上手い人ではありません。

ちゃんと話せる人です。

デザインが上手ければ仕事が来る、とは限らない

フリーランスを目指す人の中には、作品さえ良ければ自然に仕事が来ると思っている人もいます。

SNSに作品を載せる。
ポートフォリオサイトを作る。
コンテストで実績をつくる。

その努力は無駄ではありません。

ただ、作品を見ただけで仕事を依頼する会社は、それほど多くないものです。

実際に仕事を頼む側は、デザインの見た目だけを見ているわけではありません。

この人は話を聞いてくれるだろうか。
こちらの意図を理解してくれるだろうか。
納期を守ってくれるだろうか。
途中で連絡が取れなくならないだろうか。

そんなことも見ています。

特に中小企業の経営者は、デザインの専門家ではありません。

「この余白の使い方が素晴らしい」とか、「タイポグラフィの設計がきれいだ」といった見方をする人は多くありません。

それよりも、

「この人なら相談しやすそうだな」

という感覚のほうが、仕事を依頼する決め手になることがあります。

少し身もふたもない話ですが、仕事は人と人の間で生まれます。

作品だけが歩いて営業してくれるわけではありません。

コミュニケーション能力は、話が面白いことではない

コミュニケーション能力という言葉を聞くと、明るくて話が上手な人を想像するかもしれません。

人前で堂々と話せる。
初対面でもすぐに仲良くなれる。
会話を盛り上げるのが得意。

たしかに、それもひとつの力です。

ただ、フリーランスに必要なコミュニケーションは、少し違います。

相手の話を最後まで聞く。
分からないことを確認する。
専門用語を使わずに説明する。
できないことを曖昧にしない。
進み具合をきちんと伝える。

こうした地味なやり取りのほうが、仕事では大切です。

面白い話をする必要はありません。

飲み会の中心にいる必要もない。

静かな人でも、人付き合いが得意ではない人でも、相手に誠実に向き合うことはできます。

逆に、話は上手でも相手の話を聞かない人は、仕事では苦労します。

コミュニケーション能力は、性格ではなく技術に近いのかもしれません。

人前で話せないことを、そのままにすると苦しくなる

フリーランスになると、人前で話す場面は意外と多くあります。

打ち合わせ。
プレゼン。
オンライン会議。
交流会。
制作物の説明。

デザインを見せながら、「なぜこの形にしたのか」を話す場面もあります。

ここで言葉が出てこないと、良いデザインをつくっていても、その価値が伝わりません。

「なんとなく、こちらのほうが良いと思いました」

だけでは、相手も判断しにくい。

本当はきちんと理由があるはずです。

読みやすさを考えた。
お客様の年齢層に合わせた。
競合と似すぎないようにした。
写真が目立つように色を抑えた。

それを言葉にできるかどうか。

デザイン力と説明力は、別の能力です。

けれど仕事では、二つがセットで見られます。

どれほど良いものをつくっても、説明できなければ「好みでつくったデザイン」に見えてしまうことがあります。

これは、もったいない。

デザインの価値を守るためにも、話す力は必要です。

営業を避けると、安い仕事に集まりやすくなる

営業が苦手な人ほど、仕事を探すときに価格だけで選ばれる場所へ行きやすくなります。

募集されている案件に応募する。
決められた金額で制作する。
言われたものをそのままつくる。

自分から説明したり、提案したりしなくていいので、気持ちは少し楽です。

ただ、その働き方だけに頼ると、価格競争に巻き込まれやすくなります。

依頼する側から見ると、違いが分からないからです。

誰に頼んでも同じように見える。
それなら安い人に頼もう。

そうなってしまいます。

自分の考えや仕事の進め方を伝えられる人は、価格以外の理由で選ばれます。

たとえば、

「この人は話を整理してくれる」
「こちらが気付いていない問題まで見てくれる」
「デザインだけではなく、使い方まで考えてくれる」

そんな評価です。

営業とは、自分を大きく見せることではありません。

相手にとって、どんな役に立てるのかを伝えることです。

「営業できない」は、仕事を待つ理由になってしまう

営業が苦手な人の中には、自分から声をかけることに抵抗がある人も多いと思います。

売り込んでいるようで嫌だ。
断られるのが怖い。
迷惑に思われたくない。

その気持ちはよく分かります。

僕も、営業は押しの強さだと思っていた時期があります。

でも、仕事をしていると、営業の見え方が少し変わってきます。

営業は「買ってください」と迫ることではありません。

相手の困りごとを聞くこと。
自分にできることを伝えること。
必要なければ、それで終わること。

それくらいでもいいはずです。

むしろ何も伝えなければ、相手はその人が何をできるのか分かりません。

デザインが必要になったとき、思い出してもらうこともできない。

仕事が来ないのではなく、仕事を頼める人として認識されていないだけ、ということもあります。

少し厳しく聞こえるかもしれません。

ただ、フリーランスは自分の存在を誰かに知らせなければ、存在していないのと同じになってしまうことがあります。

デザイナーほど、言葉から逃げないほうがいい

デザインは、見た目を整える仕事だと思われがちです。

でも本当は、伝える仕事です。

会社の魅力をどう見せるか。
商品の特徴をどう伝えるか。
誰に、何を感じてもらうか。

そこを考える仕事です。

それなのに、自分自身のことになると、急に伝えられなくなるデザイナーは少なくありません。

自分は何が得意なのか。
どんな仕事をしたいのか。
ほかのデザイナーと何が違うのか。
なぜこの仕事をしているのか。

こういうことを聞かれると、言葉に詰まってしまう。

少し不思議な話です。

お客様の魅力を整理する前に、まず自分の魅力を整理する必要があるのかもしれません。

立派なキャッチコピーを作る必要はありません。

「飲食店のデザインが好きです」
「難しい内容を分かりやすく整理するのが得意です」
「打ち合わせを丁寧にすることを大切にしています」

その程度からでも十分です。

言葉にすると、自分がどんな仕事を選ぶべきかも見えやすくなります。

いきなり営業上手になる必要はない

コミュニケーションが苦手だから、フリーランスには向いていない。

そこまで決めつける必要はありません。

話すことが苦手なら、準備をすればいい。

打ち合わせ前に質問を書き出す。
説明する内容をメモしておく。
制作意図を文章にしてから話す。
オンライン会議の前に一度、声に出してみる。

地味ですが、こうした準備で変わります。

人前で話すのが怖いなら、少人数から始める。
交流会が苦手なら、まずは一対一で話す。
営業電話が嫌なら、紹介や発信から関係をつくる。

やり方は一つではありません。

大切なのは、「苦手だからやらない」で終わらせないことです。

フリーランスは、デザインだけをする仕事ではありません。

話を聞く。
説明する。
提案する。
信頼してもらう。

そこまで含めて仕事です。

フリーランスの失敗は、技術不足だけではない

フリーランスデザイナーが仕事を続けられなくなると、デザイン力が足りなかったと思われがちです。

もちろん、技術が原因になることもあります。

ただ実際には、仕事が取れない。
紹介が増えない。
お客様との関係が続かない。

そんな部分で苦しくなる人もいます。

デザインは上手いのに、誰にも知られていない。
良い提案をしているのに、説明できない。
誠実に仕事をしているのに、相手に伝わっていない。

会社の魅力と同じで、フリーランスの魅力も、持っているだけでは伝わりません。

営業という言葉が苦手なら、「自分の仕事を知ってもらう活動」と考えてもいいと思います。

上手に話す必要はありません。

自分の言葉で、相手に分かるように伝える。

結局、それが一番強い営業なのかもしれません。

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