SNS副業スクール詐欺で41人逮捕。Web制作者が考える「本物の信用」とは

私たちWeb業界の人間として見逃せないニュースが飛び込んできました。

「SNSの副業スクールで6億円超の詐欺、41人逮捕」
大阪府警の発表です。
被害者は全国で約2300人にのぼるといいます。

SNSで「副業で月◯万円」「スクールを受講すれば高収入」とうたう手口はもう何年も前からあります。

この事件はただの「よくある副業詐欺」では片付けられない構造をしていたんです。

そしてその構造は、SNSとWebで仕事をしている私にとって他人事ではありませんでした。

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SNSで「スクールを受講すれば高額な収入を生み出せる」とうたって受講代名目で現金をだましとったとして、大阪府警は10日、男女計41人を詐欺容疑で逮捕したと発表した。

朝日新聞「インフルエンサーになりすまし詐欺容疑、41人逮捕 受講代名目で」

「人気インフルエンサー」は、買われていた

手口の核心は、アカウントの乗っ取りにありました。
逮捕されたグループは、もともと人気のあったインフルエンサーのアカウントを仲介業者から買い取っていたんです。
料理や美容の情報を発信していた本物のアカウントです。
何万人ものフォロワーがついています。

そのアカウントを乗っ取って別人がなりすまします。
「アフィリエイトで高額の利益を得た」「スクールを受講したおかげでフォロワーが増えた」と投稿します。
それを信じたフォロワーがDMで連絡してくると、スクールの受講代名目で現金を払わせます。

フォロワーからすれば、ずっとフォローしてきた「信頼できる人」がある日いい話を持ちかけてきた感覚になります。
でもその中身はもう別人にすり替わっている。
そして本人はすり替わっていることに気づきません。

実際に渡された商材は、調べれば分かる程度の簡単なデータだったらしいです。

33万円だの50万円だのを払って出てきたのが「ググれば分かる情報」だったわけです。

SNSのアカウントが「数字」として売買され、その数字が信用として悪用される。

これはフォロワー数を信用の証だと思い込んでいる私たち全員に向けた、けっこう重い問いかけだと思います。

容疑者らはSNSでフォロワー数の多いアカウントを仲介業者から購入。インフルエンサーに成り済まし、副業話を発信していた。

共同通信「SNSで詐欺疑い41人逮捕 インフルエンサー偽り発信」

「誠実であることにプライドを持つ」

この事件でいちばん皮肉だと感じたのが、逮捕された会社のサイトに並んでいた言葉でした。
「この業界に正直で勝つ道を作る」
「誠実であることにプライドを持つ」

正直も誠実も、どこへ行ったんだという話。

でも、笑い飛ばすだけでは終われません。
なぜなら立派なミッションを掲げたサイトを作ること自体は誰にでもできてしまうからです。
美しいコピー、洗練されたデザイン、「想い」を語るストーリー。
それらは実態とは無関係に量産できます。

むしろ中身が空っぽな商売ほど外側を立派に飾りたがる。
そういうものなんだと思います。

Webサイトやブランディングは信用を「見せる」道具になります。
でもその信用が本物かどうかは、サイトの見た目では判断できません。
ここがWebで商売をする側にとってのごまかせない事実です。

「知らなかった」末端の41人

もうひとつ考えさせられたのが、逮捕された41人の言い分でした。
釈放された数人が取材に応じて、こう話しています。
「犯罪の認識はなかった」
「普通の仕事だと思っていた」
「自分の仕事をこなして帰るだけだった」

会社員、飲食店従業員、自営業。
友人の紹介で働き、給与をもらっていた人もいるといいます。
役割は営業やアフターサポートに細かく分かれていて、全体像が見えないまま自分の持ち場だけをこなしていました。

釈放された20代の2人が取材に応じ、「犯罪の認識はなく、普通の仕事だと思っていた」と話しました。

読売テレビ「『犯罪の認識なかった』“副業詐欺”の疑いで逮捕された2人」

悪事を働いている自覚がないまま巨大な詐欺の歯車になっていたことになります。
いわゆる「闇バイト」と構造がそっくりです。

もちろん本当に知らなかったのかどうかは、これから捜査で明らかになります。
でも、ここで他人事にはしないでおきたい。
「いい条件の仕事」「友達の紹介」「自分の担当だけやればいい」この入口は誰の前にも開いています。

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なぜ、副業詐欺は減らないのか

ここで少し冷静に、なぜこの手の詐欺がなくならないのでしょうか。
専門家が指摘していたのは、こんな背景です。
円安と物価高で家計が苦しい。
だから「ちょっと副業でも」という動機が生まれやすい。
そこに多くの企業が副業を解禁した流れが重なる。
すき間時間で稼ぎたい人がSNSで「お手軽な副業」を検索する。
するとこういう話が出てきやすい。

つまり被害に遭った人を「情報弱者」と切り捨てるのは、たぶん間違っています。
生活を少しでも楽にしたい、前向きに動こうとした人ほどこういう罠の射程に入ってしまう。
真面目な人が狙われる構造になっているんです。

そして見分けるのが本当に難しくなっている。
昔の詐欺はどこか胡散臭さがにじみ出ていました。
でも今は、信頼できるアカウント、立派なサイト、それっぽい実績、丁寧な対応と表面は「本物っぽく」なっている。
だからこそ見た目の信用情報だけで判断してはいけない時代になりました。

本物の信用は、見た目の外側にある

この仕事をしていると、つくづく思うことがあります。
Web制作もSNS運用も、突き詰めれば「信用を可視化する仕事」だということです。
その会社が持っている誠実さや実力を見える形にして、届けたい相手に伝える。
それが本来の役割だと私は思っています。

でも今回の事件は、その道具が逆向きに使われたときの怖さをまざまざと見せつけました。
立派なサイトも人気のアカウントも、中身が伴わなければ人をだますための仮面になってしまう。

だからこそ、私がクライアントさんと向き合うときに大事にしているのはシンプルなことです。
飾りで信用をでっち上げない。
実態のある強みを正直にきちんと伝わる形にする。
「すごく見せる」ことより「本当のことが、ちゃんと伝わる」ことを優先する。

地味かもしれません。
でも、フォロワー数も洗練されたデザインも簡単に演出できてしまう時代だからこそ、最後に残るのは「本当に積み重ねてきたものがあるかどうか」だけだと思うんです。

でも、こういう事件こそ、自分たちの仕事の意味を問い直すいい機会なのかもしれません。


参考・出典

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