
Threadsで同業者の方とやり取りをしていて、「ああ、これからこういう相談は増えそうだな」と思う話がありました。
それはCanvaで作ったホームページの話。
Web制作をしている人なら、たぶん一度は引っかかるテーマだかもしれません。
Canvaは本当に便利です。
SNSの投稿画像も、チラシも、プレゼン資料も、YouTubeのサムネイルも作れますし、ちょっとした動画やかんたんなWebページまで作れてしまいます。
昔ならIllustratorやPhotoshopを使えないと難しかったものが、今はテンプレートを選んで写真と文字を入れ替えるだけで、かなり見栄えよく作れるようになりました。
これはすごいことです。
小さなお店や個人事業主、地域の会社にとっては、かなりありがたいツールだと思います。
毎回デザイナーに頼まなくても自分たちで発信できますし、急なお知らせもすぐ作れる。
SNS投稿も続けやすくなります。
そういう意味で、Canvaは今の時代にとても合っているツールだと思います。
ただ、その便利さの反面、Web制作の現場では少しややこしい話も出てきています。
今回のやり取りも、まさにそういう話。
クライアントさんが、前任者からCanvaで作られたデモサイトのようなものを引き継いでいたそうです。
見た目はもうホームページっぽくて、ページもあるし、文字も写真も入っている。
スマホでも見られて、URLで開くこともできる。
そうなると、お客さんからすると「もうホームページはある程度できている」と思ってしまうのも無理はありません。
そして次に出てくるのが、「これを自社サーバーに移したい」「新着情報を自分たちで更新できるようにしたい」「普通のホームページとして使えるようにしたい」という話です。
お客さん側からすれば、とても自然な要望。
見た目もページもあるのだから、それを少し直して普通のホームページとして使えるようにすればいい。
そう考えるのは当然。
でも、Web制作をしている側からすると、ここで少し嫌な予感がします。
なぜなら、見た目がホームページっぽいことと、実際に会社のホームページとして運用できることは、まったく別の話だからです。
Canvaで作ったページが見た目としてホームページに見えるのは分かりますが、それをそのまま会社のホームページとして長く使えるかどうかは、また別の話なのです。
今回のやり取りでも、その同業者の方はかなり困っている様子でした。
Canvaから出てきたと思われるソースの中身が、普通のWebサイトとして扱いやすいものではなさそうだったからです。
CSSの名前が分かりにくく、構造も読みづらい。
Canva側の仕組みに依存していて、外部のライブラリを読み込んでいるかもしれない。
あとから直そうにも、どこをどう触ればいいのか分かりにくいわけです。
こうなると、「ちょっと直せば使える」というより、「見た目だけ参考にして、最初から作り直した方が早い」という話になってきます。
私もそのやり取りの中で、「Canvaが吐き出すWebのソースだとしたら、かなり厳しそうですね」というような反応をしました。
一見すると、ちょっとした笑い話のようにも見えます。
でも、これはたぶん、これからかなり増えていく話だと思います。
Canvaが悪いわけではありません。
むしろかなり優秀なツールですし、私も便利だと思います。
ただ、ここで一回立ち止まって考えたいのは、Canvaで作ったものはどこまで“ホームページ”なのかということです。
お客さんから見れば、画面に表示されていればホームページです。
でも、作る側から見ると、ホームページには「見た目」以外にもいろいろあります。
更新できるのか、修正しやすいのか、検索に強いのか、スマホでちゃんと見えるのか、表示速度は問題ないのか、自社サーバーに移せるのか、WordPressにできるのか、別の制作会社が引き継げるのか。
こういう部分まで考えると、「見た目がホームページっぽい」だけでは足りないことがあります。
今回の話で感じたのは、まさにそこでした。
Canvaを使う人を否定したいわけでも、Canvaでデザインしている人を叩きたいわけでもありません。
問題は、もっと手前にあります。
お客さんは中身が分からないし、制作者側も、どこまでできるのかを説明しないことがある。
その結果、あとから別のWeb制作者が入ったときに「これはそのまま使うのは難しいですね」という話になる。
これが一番ややこしいのです。
Canvaは悪くない。でも、向き不向きはある
まず、ここははっきりさせておきたいです。
Canvaを使うこと自体は、まったく悪いことではありません。
むしろ、今の時代には合っていると思います。
SNS画像、チラシ、資料、YouTubeサムネイル、簡単な告知画像、イベントの案内、セミナー資料、社内資料。
こういうものを作るには本当に便利です。
昔ならちょっとしたチラシやバナーを作るにもIllustratorやPhotoshopを覚える必要がありましたが、今はテンプレートを選んで写真や文字を入れ替えるだけで、それなりに見栄えの良いものが作れます。
これは、個人事業主や小さなお店、地域の会社にとってはかなりありがたいことです。
毎回デザイナーに頼まなくても自分たちで発信できますし、急なお知らせもすぐに作れる。
SNSの投稿も続けやすくなる。
これは大きなメリットです。
なので、Canvaを使っている人を否定したいわけではありません。
ただし、Canvaで作れるものと、Web制作として納品するものは分けて考えた方がいいです。
SNS画像やチラシ、簡単な資料、イベント告知ページくらいならCanvaはとても便利です。
でも、会社の公式ホームページとして長く使う、お知らせを自社で更新する、ブログを書いてSEO対策をする、問い合わせにつなげる、採用ページを増やしていく、他の制作会社でも引き継げるようにする。
ここまで考えるなら、Canvaだけではなく、ちゃんとWebサイトとして作る必要があります。
Canvaは見た目を作るには便利です。
でも、運用できるWebサイトを作るには、また別の設計が必要になります。
お客さんから見ると、違いが分かりにくい
この問題がややこしいのは、お客さんから見ると違いが分かりにくいところです。
Canvaで作ったページもWordPressで作ったサイトも、HTMLとCSSで組んだサイトも画面で見れば同じように「ホームページ」に見えます。
お客さんは、コードの中身なんて見ません。
見るのは、画面に表示されているデザインです。
きれいか、分かりやすいか、スマホで見られるか、会社っぽく見えるか、料金が安いか、早くできるか。
判断するのはだいたいそこです。
だから、Canvaで作ったページを見て「もうホームページできてるじゃん」と思ってしまうのも無理はありません。
でも、Web制作側から見ると、そこには大きな違いがあります。
たとえば、お知らせを更新したいなら管理画面が必要になりますし、ブログを書きたいなら投稿機能が必要になります。
SEOを考えるなら、見出しの構造やページの作り方、表示速度、内部リンクなども関係してきます。
スマホで見やすくするならレスポンシブの設計も必要ですし、後から直しやすくするならHTMLやCSSの書き方も大事です。
つまり、ホームページは見た目だけではありません。
中身の作り方がとても大事なのです。
Canvaで作ったものは「完成イメージ」に近いことがある
分かりやすく言うと、Canvaで作ったWebページは、場合によっては「完成イメージ」に近いです。
家で例えるなら、完成予想図みたいなものです。
見た目は分かるし、雰囲気も伝わる。
お客さんにも説明しやすい。
でも、その絵だけでは家は建ちません。
実際に家を建てるには、設計図が必要です。
基礎も必要ですし、電気も水道も配管も必要です。
耐震や断熱も考えなければいけません。
Webサイトも同じで、見た目だけではなく、裏側の設計が必要になります。
Canvaで作った見た目は参考になります。
でも、それをそのまま会社のホームページとして長く使えるかというと、別の話です。
特に、自社サーバーに移したいとか、WordPress化したいとか、お知らせ更新を付けたいという話になると、最初から作り直した方が早い場合があります。
なぜCanvaで納品する人が出てくるのか
では、なぜCanvaで作ったものをホームページとして納品する人が出てくるのでしょうか。
これは、たぶん悪気があるというより、本人も違いを知らないことが多いのだと思います。
Canvaは簡単にきれいなものが作れますし、Webサイトとして公開する機能もあります。
そうなると、「Canvaでホームページ作れます」と言いやすくなります。
たしかに、簡単なページなら作れます。
でも、Web制作として考えると、それだけでは足りない場合があります。
HTMLのこと、CSSのこと、スマホ対応のこと、SEOのこと、サーバーのこと、WordPressのこと、更新機能のこと、保守のこと。
こういう中身を知らないまま、見た目だけで「ホームページ制作できます」と言ってしまうと、あとから問題になります。
Canvaで作ることが悪いのではありません。
問題は、Canvaでできる範囲を超えたものまで、できるように見せてしまうことです。
もちろん、Canvaで作った簡易ページでも十分な案件はあります。
一時的なキャンペーンページ、イベントの案内ページ、プロフィールページ、名刺代わりの簡単なページ。
そういう目的なら、Canvaでも問題ない場合があります。
でも、会社の公式サイトとして何年も使いたい、検索から集客したい、採用情報を更新したい、ブログを積み上げたい、問い合わせを増やしたい。
そういう目的なら、最初からWebサイトとして設計した方が安全です。
なぜクライアントは発注してしまうのか
一方で、クライアント側にも理由があります。
多くのクライアントは、Web制作の中身を知りません。
これは当然です。
本業ではないからです。
飲食店なら料理や接客が本業ですし、建設会社なら現場や技術が本業です。
介護施設なら利用者さんへの対応、美容室ならお客さんの髪を整えることが本業です。
Webの中身まで詳しく分からなくて当然です。
だから、「ホームページ作れます」と言われれば、普通のホームページができると思いますし、「Canvaで作れます」と言われても、それがどういう意味なのか分からない人も多いはずです。
Canvaで作った簡易ページなのか、WordPressで作るサイトなのか、HTMLとCSSで作るサイトなのか。
自社で更新できるのか、SEOに向いているのか、他社に引き継げるのか。
この違いは、一般の方にはかなり分かりにくいのです。
だからこそ、制作側がちゃんと説明しなければいけないのだと思います。
お客さんが分からないのは当然で、分からないから相談しているし、分からないから依頼している。
だから制作者側が、専門用語をかみ砕いて説明する必要があります。
安いには理由がある
Canvaでの制作が広がる背景には、価格の安さもあります。
お客さんはできれば安く作りたいし、制作者側もCanvaなら短時間で作れるから、低価格で出しやすい。
これはこれで、需要はあります。
ただ、気をつけなければいけないのは、安い理由です。
本当に効率化されて安いのか、それとも、本来必要な工程を省いているから安いのか。
ここは大きな違いです。
Webサイトをちゃんと作るには、いろいろな工程があります。
どんな人に見てもらうのか、何を伝えるのか、どの順番で見せるのか、スマホでどう見せるのか、お知らせをどう更新するのか、検索にどう引っかけるのか、問い合わせまでどうつなげるのか、公開後にどう育てるのか。
こういうことを考えると、当然それなりの時間がかかります。
そこを全部飛ばして、見た目だけ作れば安くはなります。
でも、それは「安く作れた」というより、必要な部分をやっていないだけかもしれません。
後から「更新できない」「検索に弱い」「スマホで崩れる」「他社が触れない」「結局作り直し」となれば、最初に安く作った意味がなくなってしまいます。
安いことが悪いのではありません。
ただ、安い理由を理解しておくことが大切です。
安くても目的に合っていれば問題ありませんが、目的に合っていない安さは、あとから高くつくことがあります。
問題はCanvaではなく、認識のズレ
今回の話で一番大事なのは、Canvaを叩くことではありません。
問題は、認識のズレです。
作った側は「Canvaでページを作って公開したから納品した」と思っている。
一方でお客さんは「ホームページを作ってもらったから、これから自由に更新したり移設したりできる」と思っている。
ここがズレています。
そして、後から別のWeb制作者が入ったときに「これはそのまま使うより作り直した方が早いです」という話になる。
するとお客さんは「え?もうホームページあるのに、なんでまた費用がかかるの?」と思ってしまいます。
このすれ違いが一番よくないところです。
最初から、「これはCanvaで作る簡易ページです」「WordPressではありません」「お知らせ更新はできません」「自社サーバー移設は想定していません」「本格的に運用するなら別途構築が必要です」と説明されていれば、そこまで大きな問題にはなりません。
でも、その説明がないまま「ホームページ制作」として売ってしまうと、あとでトラブルになります。
Canvaで作ること自体は悪くありません。
でも、Canvaで作ったものを何として納品するのか。
デザインなのか、簡易ページなのか、公開用の一時的なページなのか、会社の公式サイトなのか、WordPressサイトなのか、自社更新できるサイトなのか。
ここが曖昧なまま進むと、あとで必ず話がズレます。
制作者側がちゃんと線引きする必要がある
これからは、制作者側がもっと分かりやすく説明する必要があると思います。
Canvaで作るならCanvaで作ると言う。
簡易ページなら簡易ページだと伝える。
デザインだけなら実装は別だと伝える。
WordPressならどこまで更新できるのか伝える。
SEOまで考えるなら最初から設計が必要だと伝える。
専門用語を並べる必要はありません。
お客さんに分かる言葉で、「これは見た目を作るものです」「これは運用できるホームページです」「ここから先は別の作業が必要です」と伝えることが大事です。
Web制作の仕事は、ただ作るだけではありません。
お客さんが分からない部分を整理して、目的に合った作り方を提案することも仕事です。
むしろ、これからはそこが大事になってくると思います。
AIも出てきましたし、ノーコードツールも増えました。
テンプレートもどんどん良くなっていて、Canvaのような便利なツールもさらに進化していくはずです。
そうなると、見た目だけなら誰でもそれなりに作れる時代になります。
だからこそ、Web制作者に必要なのは、「作れます」だけではなく、「その目的なら、この作り方がいいです」と言えることだと思います。
何で作るかより、何のために作るか
結局、今回の話はここに戻ると思います。
何で作るかより、何のために作るか、です。
一時的な告知ページならCanvaで十分なこともありますし、SNS画像ならCanvaはとても便利です。
チラシや資料も、Canvaで十分な場面はたくさんあります。
でも、会社のホームページとして長く使いたい、検索から問い合わせを増やしたい、採用につなげたい、自社でお知らせを更新したい、ブログを積み上げたい、将来的にページを増やしたい。
そういう目的があるなら、最初からWebサイトとしてきちんと作った方がいいです。
Canvaは便利な道具です。
でも、便利な道具だからこそ、使いどころを間違えるとトラブルになります。
これはCanvaだけの話ではありません。
ノーコードでも、AIでも、テンプレートでも同じです。
簡単に作れるものが増えた時代だからこそ、「それで何をしたいのか」「どこまで運用したいのか」「将来どう使いたいのか」を考えることが大事です。
最後に
今回、同業者の方とのThreadsでのやり取りを通じて、改めて考えさせられました。
Canvaを使うことは悪いことではありません。
むしろ、情報発信のハードルを下げてくれる、とても便利なツールです。
ただし、Canvaで作ったものを、普通のWebサイトと同じように考えてしまうと危険です。
見た目があることと運用できることは違いますし、デザインがあることと構築できていることは違います。
納品されたことと、長く使えることも違います。
ここを、制作側もクライアント側も、もっと分かりやすく共有していく必要があると思います。
Web制作は、ただ画面をきれいにする仕事ではありません。
事業に使える形にすること、更新できるようにすること、検索されるようにすること、問い合わせや採用につなげること、長く育てていける土台を作ること。
そこまで考えて作るから、Webサイトは会社の資産になります。
Canvaで十分なものはCanvaでいい。
でも、Canvaでは足りないものは、ちゃんとWebサイトとして作る。
この線引きを、私たち制作者がもっと分かりやすく伝えていかなければいけないなと思うのです。
それは製作者の使命ともいえるでしょう。
お客さんに責任は無いのです。

株式会社ガイネット代表取締役 趣味は神社仏閣巡り 初めてホームページを作ったのは20年以上前。そこから2社ほどで修行し33歳でフリーランスに、色々あって今さら法人設立。WEBとデザインの何でも屋であり書家でありYouTuberです。