石黒ホーマ、ホーマック、そしてDCM。名前が変わっても残る“地域の記憶”の話

ChatGPT Image 2026年6月1日 20 15

「ホーマック行ってくる」

北海道で暮らしていると、今でもこう言う人はけっこう多いのではないでしょうか。

看板はもう「DCM」になっている。

でも、口から出るのは「ホーマック」。

もっと上の世代であれば、「石黒ホーマ」という名前の方が馴染み深い方もいるかもしれません。

この、名前が変わったのに昔の呼び方が残っている感じ。

経営やブランドの視点で見ると、かなり面白いと思います。

北海道のホームセンターは「石黒ホーマ」から始まった

DCMの公式沿革を見ると、北海道におけるルーツは、株式会社石黒商店にあります。

1976年、株式会社石黒商店がホームセンター事業に進出し、釧路市に中園店をオープン。

その後、1987年に社名を石黒ホーマ株式会社へ変更。

さらに1995年には、石黒ホーマ株式会社、株式会社メイク、イシグロジャスコ株式会社が合併し、ホーマック株式会社となります。

つまり北海道の人にとって馴染み深い「ホーマック」という名前は、単なる店名ではなく、石黒ホーマから続く北海道のホームセンターの歴史そのものでもあります。

そしてその後、ホーマックは全国規模のホームセンター再編の中に入っていきます。

2003年には、カーマ、ダイキ、ホーマックの3社による業務・資本提携が締結。

2006年には、カーマ、ダイキ、ホーマックの3社による経営統合によってDCM Japanホールディングスが設立されます。

2015年には、ホーマックは「DCMホーマック」へ。

2021年には、DCMカーマ、DCMダイキ、DCMホーマック、DCMサンワ、DCMくろがねやの5社が統合され、DCM株式会社となります。

そして2022年には、店舗名が順次「DCM」に統一されていきました。

石黒ホーマ。
ホーマック。
DCMホーマック。
DCM。

この変化は、単なる看板の変更ではありません。

地域企業が大きなグループに入り、全国ブランドへ統合されていく流れそのものです。

店名は変わっても、人の記憶はすぐには変わらない

面白いのは、看板が変わっても、人の記憶はすぐには変わらないことです。

店名がDCMになっても、会話の中では「ホーマック」と言う。

これ、けっこう自然なことだと思います。

なぜなら、生活の中に長く入り込んだ名前は、単なる記号ではなくなっているからです。

「ホーマック」は、ただの店名ではありません。

週末に日用品を買いに行った場所。
雪かき道具を買った場所。
灯油ポリタンクや長靴を探した場所。
工具や木材を買った場所。
新生活の準備をした場所。
庭や車庫まわりのものを揃えた場所。

そういう記憶と結びついています。

だから、看板が変わっても、頭の中の地図ではまだ「ホーマック」だったりする。

これはブランドにとって、かなり強い状態です。

広告を出したから覚えられるのではなく、生活の行動とセットで記憶されている。

こういうブランドは強いです。

ホームセンターは、地域の“困った”を受け止める場所だった

ホームセンターの面白さは、商品ジャンルがとにかく広いことです。

工具、木材、塗料、金物、日用品、園芸用品、ペット用品、カー用品、灯油用品、除雪用品。

並んでいる商品だけ見ると、かなり雑多です。

でも、お客様から見ると、ホームセンターは「商品がたくさんある店」ではありません。

困ったときに行く場所です。

水道まわりが壊れた。
棚を直したい。
雪かき道具が必要になった。
庭を整えたい。
車用品を買いたい。
急にネジや部品が必要になった。

こういうときに、まず思い出される。

特に北海道では、ホームセンターの役割はかなり生活に近いと思います。

冬がある。
雪がある。
車社会である。
庭や家まわりの手入れがある。
郊外型の暮らしがある。

そう考えると、ホーマックという名前は、北海道の暮らしの中にかなり深く入っていたのだと思います。

なぜDCMに統一する必要があったのか

では、そんなに馴染み深い名前を、なぜDCMに統一していったのか。

ここも経営的に見ると面白いところです。

地域の名前には強さがあります。

ホーマックは北海道で強い。
カーマは中部で強い。
ダイキは四国や中国地方で強い。
サンワやくろがねやも、それぞれの地域に根づいていました。

しかし、会社として全国展開し、仕入れ、物流、商品開発、システム、EC、プライベートブランド、広告などを強化していくには、ブランドを統一した方が効率的です。

お客様から見ても、全国どこでも同じDCMとして認識できる。

会社側から見ても、広告や販促、アプリ、EC、PB商品、採用、店舗改装などを一本化しやすい。

つまり、DCMへの統一は、地域の名前を捨てるというより、全国チェーンとしての戦い方に合わせたブランド再編だったのだと思います。

これは成長のためには必要な判断だったのでしょう。

ただし、ここに難しさもあります。

効率化のために統一すると、地域の記憶は薄くなる可能性があります。

ブランドを強くするための統一が、逆に地元の人にとっては少し寂しく感じられることもある。

このバランスが、ブランド経営の難しいところだと思います。

「ホーマック」が消えた寂しさの正体

「DCM」という名前は、全国展開する会社としてはわかりやすい。

ロゴも統一され、グループとしての見え方も整理されます。

でも、北海道民の感覚としては、少しだけ寂しさもあります。

なぜなら「ホーマック」という名前には、北海道の生活の匂いがあったからです。

特別におしゃれな名前ではない。
今っぽい響きでもない。
でも、暮らしに馴染んでいた。

この“馴染み”というものは、意外と強いブランド資産です。

企業側がロゴや看板を変えた瞬間に、完全に切り替わるものではありません。

むしろ、お客様の記憶の中では、しばらく昔の名前が生き続けます。

サッポロファクトリーのことを、昔の施設名で呼ぶ人がいる。
コンビニ跡地を、前の店名で説明する人がいる。
駅や商業施設の名前が変わっても、古い呼び方が残る。

それと同じです。

名前は、地図だけでなく、記憶の中にも残ります。

地域ブランドと全国ブランドの間にある難しさ

石黒ホーマからホーマック、そしてDCMへの流れは、地域企業が成長していく上で避けて通れないテーマを見せてくれます。

地域に深く根づくほど、名前には記憶が乗る。

一方で、会社が大きくなるほど、ブランドは統一したくなる。

地域ごとに違う名前を残すと、親しみは残ります。

でも、全国的な認知や広告効率、システム統合の面では複雑になります。

逆に、全国ブランドに統一すると、効率は上がります。

でも、地域ごとの記憶や温度感は薄くなるかもしれません。

これは、どちらが正解という話ではありません。

成長のステージによって、必要な判断が変わるということだと思います。

ただ、ひとつ言えるのは、ブランド名を変えるときには、名前に乗っていた記憶までどう引き継ぐかが大事だということです。

中小企業にも起こる「名前」と「記憶」の問題

これは大企業だけの話ではありません。

中小企業でも、同じようなことは起こります。

社名を変える。
ロゴを変える。
ホームページをリニューアルする。
事業内容を整理する。
昔ながらの屋号をやめる。
新しいブランド名を作る。

こういうタイミングはあります。

そのときに、見た目を今っぽくすることは大切です。

ただ、それだけでは足りません。

大事なのは、昔からのお客様が感じていた信頼や安心感を、どう新しい見せ方に引き継ぐかです。

古い名前には、古さだけではなく記憶があります。

昔のロゴには、古くささだけではなく安心感があります。

長く使ってきた言葉には、地元のお客様との関係性が乗っています。

それをすべて消してしまうと、見た目はきれいになっても、その会社らしさが薄くなることがあります。

逆に、昔の要素を何も変えずに残しすぎると、新しいお客様には伝わりにくいこともあります。

だからこそ、リブランディングやホームページ制作では、ただ新しくするだけではなく、何を残して、何を変えるかを考える必要があります。

ホームページや広告で大事なのは、情報ではなく“引き継ぐこと”

ホームページを作るとき、つい会社概要やサービス内容、実績を整理することに意識が向きます。

もちろん、それは大切です。

でも、長く地域で選ばれてきた会社の場合、それだけでは不十分です。

伝えるべきなのは、情報だけではありません。

その会社が、地域のお客様にとってどんな存在だったのか。
昔から何を頼られてきたのか。
名前や屋号にどんな記憶が乗っているのか。
新しく見せる中で、どの安心感は残すべきなのか。

ここまで考えると、広告やホームページは単なる制作物ではなくなります。

会社の記憶を整理し、次の世代のお客様に引き継ぐものになります。

石黒ホーマからホーマック、そしてDCMへの流れを見ていると、ブランドとはロゴや看板だけではないのだと感じます。

それは、お客様の生活の中で何度も呼ばれ、使われ、思い出されてきた名前の積み重ねです。

まとめ:名前が変わっても、記憶はすぐには消えない

石黒ホーマ、ホーマック、DCM。

この流れは、北海道のホームセンターの歴史であり、同時にブランドが成長していく過程でもあります。

地域に根づいた名前があり、
それが広がり、
統合され、
全国ブランドへ変わっていく。

その過程で、効率や認知は強くなります。

一方で、昔の名前に親しんできた人の記憶は、すぐには消えません。

看板がDCMになっても、つい「ホーマック」と呼んでしまう。

そこには、単なる言い間違いではなく、生活の中にあったブランドの記憶があります。

企業が名前や見せ方を変えるとき、本当に大切なのは、ただ新しくすることではありません。

昔から選ばれてきた理由を、どう残すか。

地域のお客様の記憶を、どう次の形に引き継ぐか。

新しさと馴染みを、どう両立させるか。

そこまで考えられたとき、リブランディングやホームページ制作は、ただ見た目を変える作業ではなく、会社の価値を次へつなぐ仕事になるのだと思います。

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