旭山動物園の事件が教えてくれたこと。SNS時代に地域・企業ブランドを守るWeb広報の話

2026年4月、旭山動物園で事件が起きました。

詳細はここでは触れませんが、全国的に有名な観光地で起きたこの出来事は、SNSで瞬く間に広がり、「また旭川か」という言葉とともに地域全体のイメージを揺るがしました。

旭川に暮らしていると、この空気は肌で感じるものがあったと思います。

地元の飲食店や宿泊施設のオーナーの中には、「うちは何も関係ないのに」と頭を抱えた方もいたはずです。

ただ、正直に言うと、この状況は旭川だけの話ではありません。

規模は違えど、同じことはどの地域でも、どの企業でも起きうる。

今回はそういう話をしたいと思います。

なぜ「また旭川か」になるのか

SNSの炎上が怖いのは、「事実」より「印象」が先に広がるからです。

人は、個別の出来事を冷静に切り分けて考えません。

過去の記憶と今回の事件がひとつにまとめられ、「旭川=問題が起きる場所」というイメージが出来上がります。

心理学的には「ヒューリスティック」と呼ばれる現象ですが、難しい話ではなく、要するに人間の脳が「省エネ」で判断しているだけです。

SNSはここに油を注ぎます。

感情的な言葉ほど拡散されやすく、「また旭川か」のような短くて強いフレーズが独り歩きしていく。冷静な声は、どんなに正確でも埋もれていきます。

旭山動物園の展示や運営が問題だったわけではありません。

でも、人は「場所」と「事件」をセットで覚えます。観光は論理ではなく感情で動く。それがSNS時代の現実です。

「嵐が過ぎるのを待つ」は、待っているだけで悪化する

こういう状況になったとき、多くの事業者が選ぶのが「静観」です。

余計なことを言って火に油を注ぐより、黙っていた方がマシという判断です。

気持ちはわかります。

ただ、SNS上では沈黙が「隠蔽」と映ります。

何も言わないあいだにも、ネットでは別の物語が作られていく。

気づいたときには、もっと大きなイメージダウンになっていた、というケースが実際に起きています。

では、具体的にどう動けばいいのか。フェーズに分けて整理してみます。

フェーズ1|直後から1週間「安心は言葉より空気で伝える」

まず大事なのは、「安全です」と主張することではありません。

「安全です」と繰り返しても、根拠がなければ逆効果です。

それよりも、見ればわかる状態を作ることの方がずっと効く。

営業中であることを明確に発信する、店内や施設の様子を写真や動画で見せる、スタッフの顔が見える投稿をする。こういったことです。

長い文章の説明より、スタッフが笑顔でいる写真一枚の方が、人の不安を和らげます。

「伝える」のではなく「見せる」。この違いが初動でかなり大きく影響します。

フェーズ2|休園・混乱期「来る理由を作り直す」

ここが、事業者として一番差がつく局面です。

旭山動物園が休園していると、「旭川に行く理由がない」という認識が広がります。

でも実際には、旭川には動物園以外にも魅力があります。旭川ラーメン、地元のカフェ、街歩き、自然体験。

動物園ありきではない旭川の魅力を、この時期に積極的に発信することが大事です。

このとき、情報をバラバラに出すより「パッケージ」にした方が動かしやすい。

宿泊+グルメのセットプラン、カフェ巡りのモデルコース、女子旅やカップル向けの提案など、旅の目的を丸ごと用意することで、来訪のハードルが下がります。

メッセージの作り方にも注意が必要です。

「事件とは関係ありません」と直接否定するのは、かえって逆効果になりがちです。

それより、こういう言い方の方が自然に届きます。

「今だからこそ、ゆっくり楽しめる旭川がある」

ネガティブを打ち消そうとするのではなく、別の価値に変換する。これが広報の核心です。

フェーズ3|再開後「日常を丁寧に見せる」

動物園が再開したら、今度は「戻ってきた感」を出すことが大事です。

来訪者のリアルな写真や声を出す、混雑していない今の快適さを伝える、スタッフの日常を見せる。

こういった地道な発信が、イメージの回復を支えます。

派手なキャンペーンより、「普通にいい場所だよ」という温度感の積み重ねの方が、長い目で見ると信頼につながります。

結局、ネガティブなイメージは「消せない」

一度ついたイメージは、消えません。

「また旭川か」という印象を、正面から打ち消すことはできない。

いくら否定しても、SNSでは否定の言葉すら「話題」として拡散されるだけです。

できることは一つで、別のストーリーで上書きすることです。

SNSは「わかりやすい物語が勝つ場所」です。

「また旭川か」という雑だけど強い物語に勝つには、それを上回る別の物語を作るしかない。

「旭川、実はこんなにいいところだよ」を地道に積み上げていくことが、唯一の手段です。

これは旭川だけの話ではない

今回の件で浮き彫りになったのは、旭川の観光が「旭山動物園ありき」の構造になっていたことです。

動物園が止まれば集客が止まる。そういう一本足の状態で、ずっと来てしまっていた。

これはどの事業者にも共通するリスクです。

たとえばホームページへの流入が特定の一つのキーワードにほぼ依存していたとしたら、そのキーワードで検索順位が落ちた瞬間に集客がゼロになります。

SNSのフォロワーが一つのプラットフォームに偏っていれば、アルゴリズムが変わっただけで一気に届かなくなる。

何かが崩れたときに全体が止まる。そういう構造のリスクを、今回の件は改めて見せてくれました。

Webでできること。集客の入口を分散させる

では、Webの観点から何ができるか。ガイネットが普段クライアントに提案していることをそのままお伝えします。

検索流入を多角化することが、まず基本です。

「旭川 動物園」だけでなく、旭川 グルメ・旭川 カフェ・旭川 観光 モデルコース・旭川 女子旅といったキーワードで流入を取りに行く設計にする。

入口が複数あれば、一つが崩れても他が支えてくれます。

次に、「行きたい」と思わせるLPを作ること。

「安全です」を訴えるページではなく、行ってみたいという気持ちを作るページです。

「いま、ちょうどいい旭川。」というコンセプトで、混雑が少ない今だからこそのゆっくりとした体験を提案する。

否定ではなく、価値への変換です。

SNSでは、日常を積み重ねることが一番効きます。

食べている動画、街の空気、人の笑顔。「楽しそう」「美味しそう」が伝わるものを出し続けること。

「安心してください」と言うより、安心できる空気をそのまま見せる方が届きます。

来訪者の投稿を公式がリポストし、地元の店舗も巻き込んで発信の輪を広げることで、「市民も楽しんでいる旭川」というリアルな物語が生まれていきます。

それから、来た人を街全体で回す仕組みも大事です。

店舗間の相互紹介、QRコードを使った次の店への誘導、スタンプラリー。

シンプルですが、こういった仕掛けが地域全体の売上を底上げします。

こういう時に動けるかどうかで、1年後が変わる

今回のような状況は、確かにダメージです。

短期的に集客が落ちることは避けられない。ただ見方を変えると、集客構造を見直すタイミングでもあります。

普段ホームページやSNSの設計を後回しにしていた事業者が、こういうタイミングをきっかけに動き出すことがあります。

そういう事業者は、1年後に結果的に強くなっていることが多い。

発信を止めない、空気感を見せる、来る理由を作り直す。やることはそれだけです。

難しいことではないですが、やるかどうかで差がつきます。

旭川には、動物園以外にも伝えたいことがたくさんあるはずです。

それをWebで丁寧に出していくことが、今この時期に一番意味のあることだと思っています。

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