
「求人を出しているのに、応募が一件も来ない」
中小企業の経営者なら一度は口にしたことのある言葉ではないでしょうか。
クライアントさんと話していても、業種を問わずこの悩みが出てきます。
今の採用がうまくいかない理由は、求職者の「気持ち」が年代ごとにまるで違うのに企業側がそこを一律で見てしまっているからです。
今回は、年代別の求職者心理と、それを踏まえた採用のやり方を整理してみたいと思います。
そもそも、今の採用市場はどうなっているのか
まずは前提の確認からです。
今は完全な「売り手市場」です。
2026年1月時点の有効求人倍率は1.18倍。
求職者1人に対して、1件以上の求人がある状態が続いています。
つまり、企業が人を選ぶ時代ではなく、求職者から企業が選ばれる時代になっているということです。
そして、この不利を一番もろにかぶっているのが中小企業です。
従業員300人未満の中小企業における求人倍率は、なんと8.98倍。
1人の求職者を、約9社で奪い合っている計算になります。
一方で5,000人以上の大企業は0.34倍。
その差は26倍以上です。
これだけ見ると絶望的に思えるかもしれませんが戦い方はちゃんとあります。
そのカギが「年代別の心理」を読むことなのです。
今の若者(新卒)が会社に求めているもの
まずは入口となる新卒、つまり今の若者からです。
彼らが会社選びで重視しているのは、ざっくり言うと「安定」「ワークライフバランス」「給与」の3つです。
マイナビの調査によると、今の学生の就職観で最も多いのは「楽しく働きたい」。
そして、最も伸びているのが「個人の生活と仕事を両立させたい」という声でした。
企業選択のポイントでは「安定している会社」が6年連続で1位。
「給料が良い会社」も3年連続で増えています。
別の調査でも、重視するものは「安定」を筆頭に「貢献」「金銭」「成長」がほぼ横並びという結果が出ています。
ここで経営者として押さえておきたいのは、彼らが「お金」を口にしづらいだけでしっかり見ているという事実です。
実際、ある調査では86.3%の学生が「初任給が高い企業は志望度が上がる」と答えています。
そして81.9%が「就職において初任給を重視している」と答えているのです。
初任給の引き上げは、もはや全国的な流れになっています。
帝国データバンクの調査では、2026年入社の新卒の初任給を引き上げる企業は67.5%。
平均の引き上げ額は9,462円でした。
2027年卒の平均初任給は23万6,597円まで上がり「25万円以上」を出す求人が初めて3割を超えました。
自社の初任給が相場からずれていないか。
まずここを冷静に確認することが、若者を採るスタートラインになります。
年代別に見る、求職者の「本音」
ここからが本題です。
転職市場で人が動く理由は、年代によってはっきり色分けされています。
ある調査をシンプルにまとめると、こうなります。
20代は「給料」
30代は「柔軟な働き方」
40代は「正社員(安定)」を求める傾向が強い。
同じ「転職したい人」でも刺さるポイントがまったく違うわけです。
これを一つずつ見ていきましょう。
20代:給料と「挑戦できるか」
20代は、企業から「ポテンシャル」で見てもらえる年代です。
だから本人たちも、未経験の仕事に飛び込むことに前向きです。
dodaのデータでは、未経験職種への転職を決めた人の割合は20代前半で53.0%。
他のどの年代よりも高い数字です。
つまり彼らは「給料が上がること」と「新しいことに挑戦できること」の両方を見ています。
中小企業にとって、ここは実はチャンスです。
大企業のように歯車の一つになるのではなく、「うちなら若いうちから幅広い仕事を任せられる」という打ち出しが効きます。
未経験でも育てる体制があること、成長できる環境であることを具体的に伝えたいところです。
30代:柔軟な働き方と「評価のされ方」
30代は、ライフステージが大きく動く年代です。
結婚、出産、子育て。
そのぶん、企業に求める条件も複雑になります。
調査でも、30代は会社選びで「柔軟な働き方(リモートワーク、時短など)」を重視する人が目立ちます。
子育て中の人が多いことが背景にあると見られています。
給与の上がり方、昇進のスピード、子育て支援、転勤の有無。
こういった条件を天秤にかけて、慎重に動くのが30代です。
もう一つ、30代の転職理由で他の年代より目立つのが「評価・人事制度への不満」です。
会社の課題に気づいて改善を提案しても、受け入れられない。
そんな中堅ならではの苦労を抱えている人が多いのです。
逆に言えば、風通しの良い社風と、明確な評価基準を示せる会社は30代に響くということです。
「ちゃんと見てもらえる」「働き方を選べる」。
この2つが、30代を口説く決め手になります。
40代以降:安定と「人間関係」
40代になると、雇用の安定への志向が一気に強まります。
調査でも、40代は転職理由に「正社員になりたい」がランクインしてきます。
そして「評価・人事制度への不満」や「上司との人間関係の悪化」も他の年代より高く出ます。
長く働いてきたぶん、職場の人間関係や扱われ方に敏感になっているのです。
一方で、40代以降は転職そのものに壁を感じています。
ある調査では、40代以降の50%以上が転職で「年齢の壁を感じた」と答えています。
これは中小企業にとって見逃せないポイントです。
大企業が敬遠しがちなベテラン層こそ、経験と即戦力を備えた宝の山かもしれません。
実際、転職市場ではミドル層の流動化が進んでいます。
ミドル世代の転職者数は2018年から2.45倍に増え、特に50代は約5倍にまで増えているのです。
年齢で門前払いするのではなく、安定した環境と敬意を持って迎える姿勢を見せる。
それだけで、優秀なベテランに選ばれる会社になれます。
年代を超えて、みんなが嫌がること
ここまで年代別の違いを見てきましたが、共通点もあります。
どの年代にも共通して多い転職理由が、「職場の人間関係がよくなかった」と「給与や待遇に不満があった」の2つです。
特に若い世代ほど、この割合が高くなります。
つまり、待遇と人間関係。
この2つが崩れていると、どんなに採用に力を入れても人はすぐ辞めていきます。
採用は「入口」ですが、本当の勝負は入った後の「定着」にあるということを忘れないでいただきたいと思います。
では、求人で応募を集めるために何をすべきか
年代別の心理がわかったところで、具体的な打ち手に落とし込みましょう。
大事なのは5つです。
1. 求人票を「具体的に」書き込む
応募が来ない一番の原因は、求人内容の魅力不足です。
給与、休日、仕事内容を曖昧にせず、数字で書く。
一日の流れや、入社後のフォロー体制まで書く。
求人票は単なる条件の羅列ではありません。
自社がどんな会社で、どんな未来を目指していてどんな仲間を求めているのか。
その思いを伝える、未来の仲間への「ラブレター」だと思って書いてほしいのです。
そしてここで、さきほどの年代別の心理が効いてきます。
20代を狙うなら「成長」と「挑戦」を、30代なら「柔軟な働き方」と「評価制度」を、40代なら「安定」と「あなたの経験を歓迎する姿勢」を書く。
誰に向けた求人なのかで、書くべき言葉は変わります。
2. 自社の採用サイトを持つ
これは強くお伝えしたいポイントです。
求人媒体は、掲載期間が終われば情報が消えてしまいます。
しかも1回の掲載で数万円から数十万円のコストがかかり続ければ続けるほど費用がかさみます。
一方、自社の採用サイトは一度作れば長く使えます。
SEO対策をすれば「地域名+業種+採用」といったキーワードで検索上位に出て無料で応募者を集められます。
さらに、媒体経由で興味を持った人の受け皿にもなります。
「この会社、もっと詳しく知りたい」と思った人が自社サイトを訪れて、そこで魅力を感じてくれれば質の高い応募につながります。
媒体に毎回お金を払い続けるか、自社の資産を育てるか。
長い目で見れば、答えははっきりしています。
3. 求人媒体を正しく選ぶ
媒体選びを間違えると、それだけで応募はゼロになります。
狙う年代やターゲットに合った媒体を選ぶことが大前提です。
主婦層、シニア層、若手など、特化型の媒体もたくさんあります。
Indeedのような検索型の媒体と、自社サイトを組み合わせるのが今の定石です。
4. 待遇そのものを見直す
入口の工夫だけでは、どうしても限界があります。
初任給、休日、リモートの可否。
こういった条件面が相場から外れていないか、定期的に確認したいところです。
すぐに大幅な賃上げが難しいなら、助成金の活用やキャリアパスの提示などできることから手をつけましょう。
5. 「今すぐ組」以外の潜在層を狙う
求人媒体を見ているのは、基本的に「今すぐ転職したい」人だけです。
でも、本当に優秀な人材は、今の仕事に満足していて、転職サイトなんて見ていないことも多いのです。
だからこそ、SNSでの発信や、社員からの紹介(リファラル採用)で、こうした潜在層との接点を作っておくことが効いてきます。
日頃から会社の雰囲気や働く人の顔が見える発信をしておけば、「いざ」というときに思い出してもらえます。
採用は「条件勝負」ではなく「伝え方勝負」
ここまで読んでいただいてわかると思いますが、中小企業の採用は大企業と同じ土俵で給料の高さだけを競っても勝てません。
勝負どころは、誰に何を伝えるか、です。
20代には成長を、
30代には働き方を、
40代には安定と敬意を。
相手の年代の心理に合わせて言葉を選びそれを求人票と自社サイトでしっかり届ける。
派手な予算がなくても、ここを丁寧にやれば応募は変わってきます。
「うちは小さいから」とあきらめる前に、まずは自社の魅力をきちんと言葉にすることから始めてみてください。
ガイネットでは、北海道の中小企業さまに向けて採用サイトの制作や求人ページの改善、SNSを使った会社の発信のお手伝いをしています。
「求人を出しても応募が来ない」
「自社の魅力をどう伝えればいいかわからない」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にお声がけいただければ嬉しいです。

株式会社ガイネット代表取締役 趣味は神社仏閣巡り 初めてホームページを作ったのは20年以上前。そこから2社ほどで修行し33歳でフリーランスに、色々あって今さら法人設立。WEBとデザインの何でも屋であり書家でありYouTuberです。