
札幌に引っ越してきたとき、新居とニトリを何往復もした記憶があります。
ベッド、カーテン、収納、タオル、キッチン用品。
新生活に必要なものが、大体一ヶ所で揃う。
これ、冷静に考えるとかなりすごいことです。
「お、ねだん以上。」というキャッチコピーも有名ですが、最近は海外事業の苦戦もよく話題になりますよね。
一方で国内は、以前ほどの爆発的成長ではないにせよ、依然としてかなり安定しています。
ただ、ここって単純に「海外で失敗した」という話ではありません。
むしろ、ニトリという会社の“本当の強み”が見えてくるポイントなんです。
ニトリは単なる家具屋ではない
まず前提として、ニトリは単なる小売店ではありません。
かなり強力なSPA型、つまり「製造・物流・販売」を一体化している会社です。
商品企画をして、海外で生産し、自社物流で運び、自社店舗で販売する。
この構造によって、中間コストを削りながら大量販売を成立させています。
そして、このモデルが日本市場にかなりハマった。
日本人の生活に最適化されている
日本って、海外と比べると家が狭いですよね。
引っ越しも多い。
転勤や進学、一人暮らしなど、生活環境が変わる頻度も高いです。
つまり、
「一生使う家具」より、
「今ちょうどいい家具」
の需要がかなり強い。
ニトリはそこを徹底的に研究しました。
・日本の住宅サイズに合う
・組み立てやすい
・価格を抑える
・店舗数を増やして近場で揃うようにする
結果として、
「近くのニトリで生活が完成する」
という状態を作ったんです。
もはや家具屋ではなく“生活インフラ”
最近のニトリって、家具だけじゃないですよね。
タオル、食器、収納、照明、寝具。
生活用品全般をかなり広く押さえています。
ネットでも、
「ニトリって家具屋というより、生活インフラだよね」
みたいな声を見かけます。
これ、かなり本質的です。
ニトリの強みは家具そのものではなく、
“日本人の生活コスト感覚に最適化されていること”
なんです。
しかし海外では前提が変わる
ところが、このモデルをそのまま海外へ持っていくと、意外と難しい。
例えば中国では、景気減速や消費低迷の影響もあり、店舗整理が進んでいるという報道もありました。
ただ、本質はそこだけじゃありません。
そもそも海外では、「家具に求める価値観」が違うんです。
“ちょうどよさ”が武器にならない市場もある
例えば欧米圏。
家具は長く使う前提だったり、ブランドやデザイン性がかなり重視されます。
逆に東南アジアでは、ローカルの低価格メーカーが非常に強い。
つまり、日本で絶妙だった
「価格と品質のちょうどよさ」
が、そのまま武器にならないケースが多いんです。
ニトリの本当の強みは物流だった
さらに重要なのが物流です。
ニトリは巨大な物流網によって成立している会社なので、店舗密度が低いと効率が一気に悪化します。
国内では高密度出店によって物流効率を最大化できていますが、海外ではまだ地域ごとの密度が足りない。
その結果、コスト構造が重くなりやすいんです。
つまりニトリの本当の強みは、
「家具が安いこと」
ではなく、
“日本市場に最適化された巨大サプライチェーン”
だったということです。
強みは「どこでも通用する能力」とは限らない
ビジネスって、
「成功した型を横展開すれば勝てる」
と思われがちです。
でも実際には、
「その成功が、どの市場条件に最適化されていたのか」
を理解していないと崩れやすい。
ニトリはそこがかなり分かりやすい。
国内で強すぎるからこそ、海外で逆に“日本特化だった部分”が浮き彫りになっているんです。
これはホームページや広告も同じ
この話、マーケティングにもかなり近いです。
北海道で刺さるデザインや言葉が、東京でも同じように刺さるとは限らない。
業種が変われば、反応する導線も変わります。
それなのに、
「前これで成功したから」
だけで横展開してしまうケースはかなり多い。
“成功した型”より、“なぜ成功したか”
ニトリが面白いのは、
「強い会社なのに苦戦している」
ことではありません。
“なぜ国内で強かったのか”が、海外で見えてきていることです。
強みとは、
どこでも通用する能力なのか。
それとも、特定環境に最適化された能力なのか。
この違い、かなり大きいと思いませんか。
デザイン系の専門学校卒業後、WEB動画系会社、フリーランスを経て現職へ。株式会社ガイネット取締役。映像制作、SNSプロデュース、グラフィックデザイン、イラストを手掛ける。